自分のための小説を書く、という趣味
小説を書くのはとても楽しいですよね。
ネットという発表の場があるから小説に限らず創作活動はすごく楽しくて刺激的で、充実した日々を送るための良い趣味になってくれます。
仕事じゃなくて趣味で書くのなら、自分のための小説を書くのもおすすめです。
作家さんが仕事として小説を書くのなら、作品は商品です。
商品としての小説を書かなくてはなりません。
みんなを楽しませるエンタメだったり、新たな刺激をもたらす文芸だったりと、商品としての価値を志す必要があります。
だけど趣味で書いたものは商品ではありません。
商品じゃないから自分のためだけに書いたっていいんです。
自分のために小説を書く、その楽しさを紹介したいと思います。
(商品うんぬんで言うと、最近は趣味で作ったものを売って収益を得るという働き方もありますがそれは今回考えないことにします)
自分の心を癒す物語を書く
すごく感動した作品への感想として「まるで私のために作られたみたい」というフレーズをたまに聞きますよね。
寄り添って励ましてくれたり。
言葉にできなかった深い悲しみを具現化してくれたり。
そんな自分の心にすごく近い位置にいてくれる作品。
よどんで見えた世界を一転して美しく見せてくれる作品。
そういう作品との出会いは人生を豊かにしてくれます。
でも自分のために作られた作品が欲しいと思っても、簡単に得られるわけじゃありません。
多くの人は偶然に見つかる奇跡を待たないといけません。
でもあなたが小説を書く趣味を持っているのなら、待つ必要はありません。
Do It Yourselfです。
そう、自分のために物語を書けばいいのです。
あなたの心を癒す作品は、あなたの手で作り出すことができます。
材料はあなたの人生
自分の心を癒す作品。
それはどうやって作ればいいのでしょうか?
ただ優しい物語を作ってもあなたの心は満たされないはずです。
大切な材料はあなたの人生。
喜びの経験や悲しみの経験……感情とセットになった様々な体験があることでしょう。
それらを盛り込むことで物語の輪郭は明確になります。
そしてあなたの価値観や理想にも光をあててください。
あなたの脳内を泳ぐ思考や空想、それらは普段の現実世界ではなかなか力を持ちません。
理想は簡単には叶わない。
絶対に叶わないわけじゃないけど、期待をするのは厳しい。
それが現実というもの。
だけどフィクションの世界は、それら力なきものに発言力を与えてくれます。
創作の中で理想は力強く輝きます。
体験と空想を混ぜて、現実に理想を付け加えたもの。
よどんで見える世界に一滴の美しさを垂らして明日の希望を作るための物語。
そういうものを自分の手で作ることができるのです。
材料はあなたの人生。
もし渾身の作品を書き上げられたのならその時には「これまでの人生はこの小説を書くためにあったのだ!」という充足感さえ得られます。
創作する過程もまたあなたの心を癒す階段となることでしょう。
人生に区切りをつける小説
創作活動によって、姿形のない気持ちや思考に形を与えることができます。
だから作り上げることでなにかに区切りをつけることもできます。
小説をやめるために小説を書く人もいます。
終止符を打つなんて言い方がありますが、その終止符を小説に務めてもらおうという発想です。
そういう時にはやっぱり、その時点までの人生や創作活動の集大成みたいな作品を書いてみても楽しいですね。
私も何度か小説を書くことで終止符を打ってきました。
その1つがニート生活です。
私は自分のために小説を書くのが好きで、すごく好きで、ずっと自分が書きたいように小説を書いていたいという欲望がありました。
私は、自分のための小説しか書かない人間でした。
そして小説を書いていたくて自分の世界に閉じこもっていました。
その欲望に終止符を打つために、やりたい放題した小説を書きました。
そして今、私はシナリオライターとして仕事をいただいています。
自立できるほどの稼ぎはないのが現状ですが、ようやく他人のために物語をつむぐようになりました。
私の場合はちゃんと自立していくために、自分のための小説を捨てる必要がありました。
だけどそれは私がそのことしか考えない生活を送っていたのが悪いのです。
大抵の人はちゃんと実生活とのバランスを取った上で、自分のための小説を書けるものと思います。
そして私とは違って、自分のためになにかする時間が必要な人というのもいることでしょう。
自分自身のための時間として、ぜひ創作活動に打ち込んでみてください。