語彙力をムダに鍛えないための基準
語彙力。
あったらカッコよさそうですよね。
だけど語彙力って本当に必要なんでしょうか?
たとえばですよ。
あなたがものすごく難しい言葉を知っていたとします。
難しい言葉を知っているなんて博識!すごいです!
だけど、その言葉を周りの人が全然知らなかったらどうでしょう?
せっかく覚えたその言葉を披露しても、周りの人はぽかーんとしてしまうんです。
これって、良いことなのでしょうか?
周りの人に通じない言葉を知っていて、なんの役に立つと言うのでしょう。
自分の知識をひけらかすことにしか役に立ちません。
なんと悲しいのでしょう……。
要するに、なんでも言葉を覚えればいいわけじゃないんですよね。
みんなに通じる範囲でたくさんの語彙を持っている。
これが理想の語彙力と言えるでしょう。
私も語彙力に富む方ではないのですが、理想の言葉の選び方についてはよく考えています。
そして知らない単語を見かけた時に「たまに役立ちそうな言葉」なのか「覚えなくてもほぼ支障がない言葉」なのかを意識するようになりました。
ではどんな言葉が役に立つ言葉なのでしょうか?
私なりの基準を紹介したいと思います。
注目しておきたい言葉の基準
さきほど書いたとおり、大前提として「それなりに知っている人がいるであろう言葉」というのがあります。
だけど少しマイナーな言葉も覚えておくとたまに役立ちます。
そういう言葉を収集する際に重視しているポイントがこちらです。
・より具体的な情報を持つ言葉
・その言葉を知っている人が使いたがる言葉
より具体的な情報を持つ言葉
具体的な情報のある言葉は、簡潔な文章を書く時や詩情を出したい時に役立ちます。
単に「雲」と書くよりも「うろこ雲」とした方が、光景をよりはっきりと読者に伝えられます。
つまりは、指し示す範囲がより狭い言葉を選ぶテクニックです。
「雲」と言うだけではあらゆる形の雲が想起されて、解釈が一意に定まりません。
ですが「うろこ雲」と限定してあげることで雲の形をはっきりとイメージできるようになります。
光景を具体的にイメージできれば読者はその光景から詩の心を感じやすくなります。
花とかも、なんの花なのか書いてあげると良いですよね。
特に俳句や短歌のように音数に限りある定型詩では、いかに具体的な言葉を使って情報量を増やすかも腕の見せ所です。
雲や花の名前を無理に覚える必要はありません。
必要になった時に調べても間に合うのであれば、覚えなくてもいいのです。
なんでも暗記するのではなく「具体的な言葉を使う余地があるぞ」というアンテナを張れるようにすると楽ができます。
もちろん覚えられるものであれば覚えちゃった方が良いんですけどね。
そうやって雲や花の名前をちゃんと書くだけなら簡単そうにも見えますが、あらゆる文章で常に具体的な言葉を用いるのは結構大変です。
詩以外の場面でも具体的な言葉を使えるようになりたいです。
「減速」と「失速」はどちらもスピードが落ちることを指す言葉ですが、「失速」の方がより具体的です。
その人の意思とは異なる原因で減速する時に限り「失速」が用いられるからです。
また、急激にスピードが落ちるという意味合いもありますよね。
そもそもの由来は飛行機が揚力を失って急激に速度を失うところから来ているそうで、そういうイメージも持っている言葉なのです。
ですから「失速」がぴったりな状況で「減速」と書いてしまうと、伝えられたはずのニュアンスが読者に届かず、読者の理解を阻害してしまいます。
ライターとしてはかなりの損ですよね。
常に最適解を選び続けるのは至難の業で、完璧を目指すものではないと思います。
でも損な表現を僅かでも減らすために言葉選びには気を払いたいです。
その言葉を知っている人が使いたがる言葉
「シュレディンガーの猫」って創作物でよく引用されます。
詳しい説明は省きますが量子力学についての思考実験の名前です。
知っていると使いたくなっちゃう言葉、というのがこの世にはいっぱいあります。
流行語もその仲間と思っていいかもしれません。
使いたがる人が多い分だけ見かける機会も増え、その言葉を知っている人も多くなります。
知っている人が多いので使いやすいです。
なにかしらの魅力があってその言葉は愛用されているはずですから、その点もグッドですね。
簡単な言葉こそ大切に
難しそうな言葉を使うと、かっこよさげに見えます。
ですから、かっこよさげな雰囲気を出したい時には難しそうな言葉を使うと効果的です。
しかし、かっこよさなんて求められない場面もあります。
とにかく伝わりやすさを重視するべき時もあるのです。
簡単で誰でも理解できる言葉こそ、すぐに出てくるようにしたいものですね。
すごく簡単な言葉なのにド忘れしちゃう時って意外とあります。
簡単な言い方がすっと出てくる人になれたらいいなあって思います。