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落乱元ネタ探し その4 離行の術

『落第忍者乱太郎』を読んでいて、これアレじゃないかなと思ったもの、他の本を読んでいてたまたま見つけたものなど、元ネタっぽい色々をメモする記事です。

 今回は、忍び込むとき、忍び込んだ先から脱出するときの方法「離行の術(りぎょうのじゅつ)」について書いてみました。

※公式にこれだという発表がない以上、単なる個人の感想ですので、疑いながらお読みください。
※今回もとても長いので、目次からの拾い読みをおすすめします。

【前置き】超自己流・忍者関係の出典の探し方

 術の話の前に、忍者関係の術や道具の出典を、どうやって探しているかについて書いておきます。

1. 忍術書を開く

 ありがたいことに、いわゆる三大忍術伝書『万川集海』『正忍記』『忍秘伝』が本になっているので、それらの目次を見ます。3冊とも中島篤巳先生によるものですが、訳注(解読・解説)と、原本そのままの両方が載っている親切仕様です。

『完本 万川集海』(国書刊行会)
   藤林保武 著、中島篤巳 訳註 2015年
『忍術伝書 正忍記』(新人物往来社)※リンク先はOD版
   藤一水子正武 著,、中島篤巳 解読・解説 1996年
『完本 忍秘伝』(国書刊行会)
   中島篤巳 訳註 2019年

 目次を見て、すぐに見覚えのある術名、忍器名に行き当たる場合があります。これは物凄くラッキーで、あとは落乱内のものと内容や図が一致するかどうか確認するだけです。

忍術書の目次
↑ 目次から見つけられる術の例
忍術書の図
↑ 目次の忍器名から該当部分の図を見て見つけられる例

 次に中身の文章を見ます。目次に出るような大きなくくりの術名でなくても、本文を見ると箇条書きで出てくることがありますので、主に文頭の数字を探し、その下を読む形を取ります。

忍術書の中身
↑ 箇条書き部分から見つけられる例

 全文を追うのは最後の最後です。その前に、新しい時代の本を見ることが多いです。 

2. 昭和の忍術研究本を見る

 落乱の元ネタとなっている忍術・忍器は、忍術書そのままの内容であることの他、後の時代(主に昭和)の先生方が、忍術書の内容を説明・解釈されたものを参考にされている場合があるようなので、そちらも確認します。いきなりここから始めることもあります。

 主に、藤田西湖、奥瀬平七郎、山口正之、名和弓雄、各先生方の著書を漁ります。今のところ、ヒット数の多い順に、奥瀬先生>名和先生>山口先生>藤田先生かなという印象です(各先生方の忍者関係のご著書を、まだ全部は持っていないのが難点ではあります)。

 うまくいくと術名のところに出典が書いてあるので、そこから忍術書のほうへ遡ることができます。

 出典が書かれていない場合は、「この術名は忍術書では見たことがないが、陰忍のくくりの中に出てくるから『万川集海』の陰忍篇を探してみよう」という感じであたりをつけて忍術書を読み返します。

 これで全部とはいきませんが、ある程度見つけることができます。探しているうちにだんだんわかってきたのですが、忍術の名前には、昭和の時代に(おそらく)読者にわかりやすくするため、分類のためなどの理由で新しくつけられたものが結構あるようです。

3. その他の忍術書も見てみる

 三大忍術伝書以外にも、所蔵先に閲覧/複写申請などしなくても、割と手軽に読むことができる忍術書がありますので、そちらを確認します。『忍者文芸研究読本』(笠間書院)の一番後ろに収録されている『当流奪口忍之巻註』、『甲賀忍術伝書 ―尾張藩甲賀者関係資料Ⅱ』(滋賀県甲賀市)に収録されている『用間加条伝目口義』などです。ヒット数は少ないものの、たまに見つかることがあります。

4. その他

 忍者系発信者の皆さん(YouTuber、ブロガー等)の動画や記事から情報やヒントをいただくこともあります。そういう場合は、どこからどういう情報を得たのか記事内に書きますので、そこから動画を観たり、リンクをたどったりしていただければと思います。

~~~

 今回の「離行の術」は、三大忍術伝書の目次に無い → 箇条書き部分の文頭を見ても無い → 奥瀬平七郎先生のご著書の陰忍のところに出てくるのを確認 → 『万川集海』の陰忍篇を頭から読む & 別の時に陽忍篇を読んでいてたまたま、で見つけたものです。

 これであっているかどうか実は自信がないのですが、そもそも落乱の「離行の術」ってどう説明されてたっけというところから順番に書きますので、ちょっと見てやってください。

落乱の「離行の術」の中身まとめ

 落乱の「離行の術」は第4巻から出て来ます。しっかり説明のある箇所を探してみたところ(説明なしでやっている場合もあります)、以下のようになりました。おまけでアニメ化時の情報もつけています。

第4巻p.63~64(名刀「極楽丸」を取り返すため忍び込むシーン)
  アニメ化時 第1シリーズ第18話では説明カット
第10巻p.91(ニセ金作りの犯人を捜して油屋へ忍び込むシーン)
  アニメ化時 第1シリーズ第36話では説明カット
第32巻p.87(謎の出城での忍者採用試験で鎖場に挑むシーン)
  アニメ化は第11シリーズ第21~24、76~80話あたりだが未視聴
第41巻p.67(スッポンタケ城の代官館から脱出するシーン)
  アニメ 第16シリーズ第4話「荒寺のアルバイトの段」に説明あり
第49巻p.60(オーマガトキ出城から脱出するシーン)
  
アニメ 第20シリーズ第4話「キツネ走りの段」に説明あり
第56巻p.86~87、91~92(角魂党のいる荒れ寺に忍び込むシーン)
  アニメ化時 第25シリーズ第18話ではシーンごとカット
第61巻p.90~91(学園内の塀を人馬で越えるシーン)
  2021.10.18現在、未アニメ化
第64巻p.177~178(秘密の抜け穴からアミタケ城へ入るシーン)
  2021.10.18現在、未アニメ化

 術の名前は出て来ないけれども実行しているシーンとしては、第12巻p.87(「一番じょうずな人が一番先に忍びこむんだよ」という喜三太のセリフあり、アニメ化時 第1シリーズ第40話には説明もセリフもなし)、第52巻p.70~77あたり(アニメ 第22シリーズ第57話「ドクササコのヘボ忍者の段」には説明あり)があります。

 色々なキャラクターが説明役をしていますが、内容を分解すると以下のようになります。

大勢(複数)の忍者が忍び込む時の方法である(上のリストのうち第56巻以外 ※第56巻には大勢、複数の文字はないが、内容から察することはできる)
確実に忍び込むための方法である(上のリスト全部)
・上と同じだが、確実に忍び込み(侵入し)、確実に脱出するための方法と、脱出のことまで書かれているのは、上のリストのうち第41、49、56巻
・複数人で入る場所を同じ忍び口からと明記しているのは、上のリストのうち第64巻(他の巻には書かれていないが、順に入るという書き方から察することはできる)
一番上手な(巧みな、腕のいい)者が先に入り、一番下手な者が最後に入る(上のリスト全部)
・上と同じだが、一番目、二番目、その次など細かく説明されている巻は、上のリストのうち第41、56、64巻
出る時は入る時の逆で、一番下手な者から先に出る(上のリスト全部)
・上と同じだが、一番上手な(巧みな、腕のいい)者が最後、まで説明されているのは、上のリストのうち第41、49、64巻
「離行の術」という名前は、間隔をあけて入る事から来ている(上のリストのうち第4、56、61、64巻)
・間隔を開けて入る方法につき、より詳しいのは、上のリストのうち第56巻(「忍術の最も巧みな者が一番先に侵入し、それが成功した事を確認してから二番目に巧みな忍者が侵入する、というふうに一定の間隔を置いて順次侵入するのだ」という兵助?のセリフ)
侵入が成功したかどうかを確認する方法が書かれているのは、上のリストのうち第56巻

 これらをまとめると、こんな感じでしょうか。

 同じ忍び口から複数名で侵入する場合、一番上手な者から、上手い順に入り、下手な者が最後に入る。この時、前の者が成功したのを確認してから次の者が行くようにする。ある程度時間を置いて、中で騒ぎが起きなければ侵入成功と見なす。脱出するときは入る時と逆、下手な者から順に出て、最後に一番上手な者が出る。侵入の際、一定の間隔を置いて(確認しながら)行うことから『離行の術』という。

※“忍び口”は「忍び口を取る」の関係の言葉で、例えば第4巻p.60には土井先生のセリフとして“忍びこむときは安全かつ はいりやすい所をえらばねばならん これを『忍び口を取る』という”とあります。

 落乱の「離行の術」についてまとまったところで、次は参考にされたと思われる、昭和の忍術研究本の話に移ります。

奥瀬先生の本の「離行の術」

 奥瀬平七郎先生の本『忍法 その秘伝と実例』の中の「離行の術」の部分を引用してみます。「陰忍の闘術・偽計十二法」という章に入っています。
※太字部分は説明用で、元の本では修飾なしの文字です。

 多数の忍者が、城や家に忍び込む場合の定石をしめす術である。多くの忍者を同一の忍び口から、城内、邸内に入れる場合は、まず忍術の最も巧みな者(確実な者)を先に行かせ、その結果、潜行に成功したこと(はいり終って後、一定時間内に騒ぎが起らねば、成功と思っていい)を確認したら、次に二番目の巧忍者というふうに、一定の間隔を置いて(離行)、順次潜入させよ、というのである。最後には一番下手(不確実)な忍者がはいることになる。
 出る時は、この反対で一番下手な者から先に出し、最後に一番上手(確実)な者が殿しんがりをつとめる。
 この術は、危険の分散と、忍者の技能の確実度による合理的利用法を示している。継続的に謀略を行う場合の原則である。

出典:『忍法 その秘伝と実例』奥瀬平七郎(人物往来社)p.213~214

 入る時は上手な人から、出る時は下手な人からという基本の侵入・脱出方法が落乱と同じというのはわかっていただけると思います。

「忍び口」というワードから落乱内の説明を見ると、第64巻の仙蔵のセリフがよく似ているのがわかります。

つまりッ!!
大勢の忍者が確実に忍び込むための基本ですッ!!
多くの忍者を同じ忍び口から侵入させる場合まず忍術の最も巧みな者を先に行かせ うまく侵入できた事を確認したら次に二番目に巧みな者を侵入させる。最後に一番下手な忍者が侵入するというものです
間隔をあけて順次侵入するところからこれを『離行の術』と言います
出る時は逆で一番下手な者から先に脱出し、一番上手な者が最後に出ます

出典:『落第忍者乱太郎』(朝日新聞出版)第64巻p.177~178

 また、全体を太字にはしていませんが、「一定の間隔を置いて順次潜入」の前後、入る時のフレーズ全体が似ているのが、第56巻の兵助(?)の説明です。

忍術の最も巧みな者が一番先に侵入し、それが成功した事を確認してから二番目に巧みな忍者が侵入する、というふうに一定の間隔を置いて順次侵入するのだ

出典:『落第忍者乱太郎』(朝日新聞出版)第56巻p.91

「成功」ということでは、同じく第56巻の利梵の質問と兵助(?)の説明がほぼ一致します。

《利梵》
侵入が成功したかどうかどうすればわかるのですか?

《兵助?》
侵入して後、ある程度の時間が経って内部に騒ぎが起きなければ侵入成功と思ってよい

出典:『落第忍者乱太郎』(朝日新聞出版)第56巻p.91~92

 それから、「危険の分散」というワードは、第41巻の土井先生のセリフに出て来ます(「危険“を”分散」になっていますが)。

複数の忍者が敵の城や屋敷に潜入する場合 まず忍術の最も上手な者が先に侵入し次に二番目の者 その次 と順次侵入し最後に一番下手な忍者が入る
出る時はこの逆で一番下手な者から先に脱出し最後に一番上手な者が出る
これは危険を分散し確実に侵入・脱出を行うための原則である

出典:『落第忍者乱太郎』(朝日新聞出版)第41巻p.67

『忍法 その秘伝と実例』にある「離行の術」については、ほぼ同じ内容が、同じく奥瀬平七郎先生著の『忍法皆伝 処世の哲理(下)』(上野市観光協会)に載っていますので、結局どちらの本を参考にされたかは特定できません(両方読まれているかもしれませんし)。

 他に持っている藤田西湖、山口正之、名和弓雄 各先生方の忍術研究本からは、この術の名前や、同じ内容の方法の記述は見つけられませんでした。研究本を網羅できているわけではないので不確実ではありますが、奥瀬先生独自の呼び方(術の名前)かも、という可能性をメモしておきます。

忍術書『万川集海』の該当部分(推定)

 上で書いた通り、落乱の出典としては奥瀬平七郎先生の本では、でいいのですが、奥瀬先生が独自の名前をつけたり解釈をされたりしていたとしても、ゼロから作った術ではないだろう(研究をされたのであって創作本ではないので)、じゃあどこかに元になった忍術があるんじゃないかということで、ちょっと探してみることにしました。

『忍法 その秘伝と実例』の中の「離行の術」の部分は、「陰忍の闘術・偽計十二法」という章に入っています。陰忍と言えば、『万川集海』に陰忍篇がありますので、そこを集中的に探しました。

『完本 万川集海』の底本となっている国立公文書館内閣文庫本『万川集海』は、全22巻と付本の「軍用秘記」からなるのですが(実は国立公文書館デジタルアーカイブから読めます)、このうちの巻第十一~十五までが陰忍編になります(さっきのリンクからだと万川集海5、6、7が該当します)。

 観念して頭から文字を追っていったところ、巻第十一 陰忍一 城営忍篇「先考術十箇条ノ事」の中に、以下のような内容を見つけました(公文書館のリンクを追っている方は、万川集海5の33コマ目1行目~を見てください)。

「味方ノ吟味」について書かれているところです。『完本 万川集海』に現代語訳がありますので引用します。

七、忍び込みに連れて行く者の選択を間違うと、潜入が困難になる。
(中略)
もしも止むを得ずに未熟者、臆病者、軽率者などを連れて行かざるを得ない状態であれば、彼らを相図役にする、万一、現場に連れて行く事になれば、入る時は仲間の後ろ、出る時は仲間の前とする。

出典:『完本 万川集海』藤林保武 著、中島篤巳 訳註(国書刊行会)p.131

 忍者として有能とは言えない“未熟者、臆病者、軽率者”と一緒に現場を出入りしなければならない時は、“入る時は仲間の後ろ、出る時は仲間の前と”するべきという内容です。これは「離行の術」と同じととらえてもいいのではないでしょうか。

 ちなみに、“もし止むを得ず~仲間の前とする”の部分は、原文だと以下のようになっています。

若シ無手練者臆病者卒忽者ハ連行デ不叶コトアラバ相図ノ役人ニスヘシ万一其場ヘ連行コトアラバ入時ハ跡出時ハ先タルヘシ

出典:『完本 万川集海』藤林保武 著、中島篤巳 訳註(国書刊行会)p.615

※“不”と“叶”の間の返り点(レ)は略、漢字は新字体、略字はカナにしています(“コト”の部分2か所)。

 しかし、侵入の順番、出る順番という一番基本の部分は同じであるものの、確認しながら離れて入れとか、その確認方法については全く書かれていません。これを大元の術だと主張するには少し弱いでしょうか。

 この短い文章からあそこまで内容を広げられるかね?と思われるかもしれませんが、奥瀬先生には「五車の術」という例があるので可能性を拭いきれません。

「五車の術」は、『正忍記』中巻「人ニ理を盡クさする習之事」が元ネタであるという話なのですが、「人ニ理を盡クさする習之事」の中には、五車の術と言えばまず思い浮かぶ、喜怒哀楽+恐についてのことが一切書かれていません。それでも関連をうかがえるのは、内容が「喜車の術」とほぼ同じで、最後のほうに「人を車にかける」という部分があるからです。

 えらそうに書きましたが、五車の術の出典については、NinTube - Ninjackチャンネル -の 嵩丸さんの解説動画で知りました。元ネタの「人ニ理を盡クさする習之事」がどういう術であるかについても、とてもわかりやすく解説して下さっているので、そちらを観ていただければと思います。

 この動画の時点では“元ネタ?”と?マークがついていますが、その後、仮説が合っていた旨をツイートしておられました。

(Tweet内の伏せ字部分、バレても大丈夫と許可をいただいています)

 この五車の術の件で、奥瀬先生の元ネタからの超解釈・再構築&ネーミングセンスを知ってしまったので、他の術でも同じようになさっている場合があるのでは、と思うようになりました。「離行の術」については、どうでしょうね?

※『正忍記』については、デジタルミュージアム 秘蔵の国 伊賀で、手書き(ガリ版刷りっぽい)の写しが公開されています。「人ニ理を盡クさする習之事」は、こちらの36コマ目からになりますので、興味のある方は開いてみてください。

~~~

 長々書きましたが、落乱&奥瀬先生の「離行の術」の内容と、一部似た感じのことが『万川集海』に出てくるということだけが確定事項です。現時点で元ネタだと断定するなど、あまり大きなことは言わないようにしておきます。

『万川集海』に「離行の術」が出てきた!

 今回、さっきまでの部分で終わるつもりだったのですが、『万川集海』の別のページに「離行ノ術」の文字を見つけてしまったので、そちらも無視できなくなりました。

 今度は陽忍篇です。陽忍篇は巻第八~十、国立公文書館の本では万川集海4に全部入っています。巻第九 陽忍中 近入之篇、内閣文庫本では項題がないのですが、「参差の術」(かたたがいのじゅつ、かたたがえのじゅつ)について書かれた部分です(万川集海4の43コマ目5行目からになります)。

『完本 万川集海』の現代語訳を引用します。
※太字部分は説明用で、元の本では修飾なしの文字です。

二、賤卒に変装し、或は離れ行きの術の利がある事
 変姿賤卒の術の利点は甲冑のさむらいは目立つので咎められる。(中略)だから紛忍が変装するのは賤卒が良い。(中略)
 また離行の術の利もある。それは一団で行く時は怪しまれ見咎められるので忍び込めないが、集団から離れて一人一人で近付けば、見咎められ穿鑿を受けた者がいても、誰かが潜入出来るという理がある。この離行の術は我国〔伊賀または甲賀〕で数回試されている。

出典:『完本 万川集海』藤林保武 著、中島篤巳 訳註(国書刊行会)p.111~112

 第5巻p.115などに出てきた「賤卒に姿を変える之術」と「紛れ忍」の大元ではという部分なのですが、文中に「離行の術」とありますよね。

“また離行の術の利もある~数回試されている”までの原文は以下です。

又離行ノ術ノ利ト云ハ一連ニ行時ハ若シ見咎メラルヽ故入るコト不叶離レ行トキハ見咎メラレタル者アリテモ妨ナク入ルモノモ有理ナレハ也此等ノ事当国ニ於テ数度のタメシアリ

出典:『完本 万川集海』藤林保武 著、中島篤巳 訳註(国書刊行会)p.579

※“不”と“叶”の間の返り点(レ)は略、漢字は新字体にしています。

 何かのために離れて行くこと以外、落乱および奥瀬先生の著書の「離行の術」とは内容が一致しないのですが、とにかく「離行の術」という術名が、“入時ハ跡出時ハ先タルヘシ”と同じ『万川集海』にあるということがとても気になりました。

 術名だけを流用されたのか、両方の内容の合わせ技で「離行の術」とされたのか(忍術の上手い下手で順番を決め、さらにこれを確認しながら離れて行ったら最強だ!みたいな)、もっと別の何かなのか。考えてわかることでもなさそうなので、該当部分の紹介だけにさせていただきます。

 何かわかりましたら、追記または別記事で書きます。今回はここまででご勘弁ください。

まとめ

 落乱の「離行の術」は奥瀬平七郎先生の本が出典、さらにその出所は『万川集海』かもしれないということを書きました。

 落乱に膨大に出てくる忍術一つ一つについて、それぞれ別の記事を起こすつもりはなく、いくらかまとめながら書くつもりですが、今回は引用などを細かく示してお伺いを立てないと全く自信がないものだったので「離行の術」のみになりました。ご批判、ツッコミ等ありましたら、ぜひお寄せください。

 今回の記事は以上です。最後まで読んでくださってありがとうございました。

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