意外とだいじょうぶかもしれない~名古屋に行った日のこと~その2
名古屋駅のスタバで無事3人が会えたところで早速の昼食。
うまいもん通りのそば屋に行くことになった。
でもその前にお手洗いに行かせてもらった。
新幹線を降りてから二人に会う前に行っておきたかったのだけれど、誘導してくれた駅員さんが男性だったので、「お手洗いに行きたい」と言い出しづらかったのだ。
3人とも全盲者なので、移動する時は、私がmちゃんにつかまって、mちゃんがtさんにつかまって1列になってあるいた。
「すみませーん、通りまーす」
みんなでそう言いながら人込みをかき分けて歩く。
この感じ、懐かしいと思った。
まだ地元の視覚障碍者の友人たちと繋がりがあった数年前、それこそ全盲者2.3人で週末の浜松の街中でランチやショッピングに行った時、こんな風に1列になって、「通りまーす」って言いながら人込みの中を歩いていたんだよなあ。
あの時の浜松駅の人込みよりも、この日の名古屋駅の人込みの方がさらにすごかった。
後で聞いた話、どうやら名古屋のどこかで福山雅治のライブがあったようで、そのこともあの人込みに関係していたようだ。
そうやって人込みをかき分けて、ようやくたどり着いた女子トイレもやはり混んでいた。
トイレの個室のドアを手で触っていった感じ、どこも埋まっている様子だった。
水が流れる音と、鍵が開く音で、どの個室が開いたのかを判断するしかない。
全盲者だけの外出は、トイレに入るだけでも一苦労だ。
その後に行ったそば屋にも人がたくさんいた。
「今入り口並んでいますので、もう少し下がってもらえますか?」
そば屋に入ろうとする私たちに、店員さんが声をかけてきた。
全盲だと並んでいる列の後ろがどこなのかが分からないので、そんな風に言っていただけるととてもありがたい。
そば屋のメニューも店員さんに頼んで読んでもらった。
私は冷やし鳥天おろしそばを注文した。
届いたそれはどんぶりがとても大きかった。
どんぶりの左横の小皿にはワサビが入っていた。
そのワサビをかけようか私は迷った。
店員さんも忙しそうだから頼むのも申し訳ないし、自分でかけると悲惨なことになるし…。
「ワサビかけるの?」
そんな私の迷いに気づいたのか、mちゃんが聞いてきた。
「えっ、うん、じゃあちょっと…」
「すみませーん、この子のおそばにワサビかけてあげて」
mちゃんが店員さんを呼び止めてくれたおかげでワサビをかけてもらうことができた。
「やってほしいことがあったらその時にちゃっちゃと頼まないと」
店員さんが立ち去った後、mちゃんからそう指摘されてその通りだなあと思った。
彼女の積極性を自分も見習わなければ。
鳥天おろしそばはとても美味しかったけれど、鳥天もそばも量が多くて全部は食べきれなかった。
そば屋を出た後mちゃんが青柳のういろうを買いたいと言うので、うまいもん通りを出てエスカに向かった。
移動中はもちろん、エスカの中もすごい人だった。
人込みが苦手な私が、これだけの人の中を歩けたら、浜松の人込みがどうってことないように思えてくる。
人込みに対する免疫がついたような気がする。
「すみません、ここは何のお店ですか?」
「青柳に行きたいんですけどどうやって行けばいいですか?」
いくつかのお店に入って、自分たちが今居る位置や、行きたいお店の場所を聞いていく。
全盲者同氏の買い物はいつもそんな感じだ。
ヘルパーさんや家族と行く買い物のように、なかなか目的の場所にたどり着けない。
正直不便に思うこともある。
でもだからこそたくさんの人と出会えるのかもしれない。
「青柳は2本目の通りの左から2番目です」
「2本目の通りの左ってことはここからだと方向はどっち?」
「右です」
名古屋に慣れているtさんが、アイスクリーム屋の店員さんとそんな話をしていた。
(ここから右の2本目の通りを左って…、それだけで分かるの?!)
そう思いながら二人の後ろをただただついていくと、本当に青柳にたどり着いた。
私だったらここから2本目の通りって言われただけでも全く分からないのに。
tさんの行動力と頭の回転はすごいなあと関心してしまった。
青柳を出てから、すぐそこのコメダコーヒーでお茶しようとしたのだが、人がいっぱいで入れなかった。
うまいもん通りに戻って、さきほどのスタバに入ろうとしたけれど、3人席は空いていないとのこと。
お茶するどころか座るところもないので、仕方なく通路の隅っこに突っ立って、お土産交換会をした。
私は静岡土産のコッコを二人に渡した。
mちゃんからはバームクーヘンと紅茶、tさんからはごっさまというお饅頭のような物をもらった。
紅茶はまだ飲めていないが、バームクーヘンとごっさまは帰宅後早速いただいた。
どちらもものすごく美味しかった。また食べたいな。
これだけの人込みでは3人で入れるところがないのもあって、mちゃんが先に帰ることになった。
予定外の二人だけになってしまった旅行記はその3に続く。