見出し画像

 ぶっちゃけ最近エッセイのねたが尽き始めつつある。ねたを探すためにも、もっと外に出なければと思ってはいるのだが、なかなかその1歩を踏み出せずにいる。
 私はどちらかと言うとインドア派の人間だ。旅行やスポーツを観戦したりやったりすると言った、外でみんなで楽しむことよりも、ラジオや音楽を聞いたり本を読んだりと言った、部屋の中で一人で楽しむことの方が好きだ。
 20代の頃は仕事に出ていたので、通勤途中のバスの中や、仕事での体験や職場の仲間との何気ない会話の中に、エッセイのねたになりそうな話はたくさんあったと思う。
 またその当時は特に家族との関係が悪く、なるべく家に居たくなかったこともあり、週末には地元の友人たちとランチや買い物に行ったり、サウンドテーブルテニス(盲人卓球)の社会人サークルに入ったりと、今では考えられないぐらいアクティブに活動していた。いや今思うとアクティブなふりをしていただけだったのかもしれない。
 そんな無理が祟ったのか、30代前後から心身に様々な不調が出るようになり、仕事に出られなくなった。また地元の友人たちともいろいろあって、自分から関わりを切ってしまった。そんなこともあって、次第に外出や人との関わりを避けるようになっていった。さらにコロナの影響もあって、他人の目がよけいに怖くなり、一人での外出はもちろん、バスや電車にも乗れなくなった。そんなわけで30代前半は半ひきこもり状態で過ごしていたと思う。
 あれから数年。今ではヘルパーさんと週に1から2回近所を散歩したり、たまにならバスや電車にも乗れるようになった。しかしアクティブだった20代の頃のようにはまだほど遠い。駅で知っている人や職場で一緒だった人に会ったらどうしようとか、電車やバスの中で知らない人から暴言を吐かれたり痴漢されたりしたらどうしようとか、一人で外出することへの不安はまだまだ尽きない。でもそれではよりおもしろいエッセイが書けないのではないかと最近よく思うのだ。
 そこでどうしたらもっと外出が好きになるのだろうかと考えてみた。
 そうだ、電車やバスを好きになれれば外出がもっと楽しくなるかもしれない。
 というのも、アクティブに活動している視覚障碍者の友人たちを見ていると、彼らには鉄道やバスなどの乗り物が好きという共通点があるように思う。特に鉄道好きの視覚障碍者は本当に多い。10人視覚障碍者が集まったとして、たぶん二人に一人は鉄道好きなんじゃないかなあ。
 しかし一方の私は、鉄道にもバスにも全くと言っていいほどロマンを感じない。私に取ってそれらの物はただの移動手段でしかない。そう思うと鉄道やバスにロマンを感じられる人がちょっと羨ましくなる。
 となると、こんどは私のロマンを感じる物は何なのだろうかと考えてみる。
 それはやはり音楽だろうか。「今行きたいところは?」と聞かれたら、真っ先に「ライブ」と答えるだろう。しかしコロナ渦での声が出せない現在のライブは、思いっきり楽しめないような気がする。ライブに行くのはもう少しコロナ渦が落ち着いてからでもいいのかもしれない。
 このコロナ渦が落ち着いて、また以前のように思いっきりライブが楽しめるようになったら挑戦してみたいことがある。それはチケットを取るところから、会場までのルート検索、泊りがけの場合なら宿泊先の手配、会場などでの介助依頼の公証、当日の移動と言った、ライブに行く上での全ての工程を自分一人でやってみたいのだ。そして願わくばライブ会場で同じ音楽を共有できる仲間ををつくれたらいいなと思っている。
 一人で外出したり、知らない人と話すのがまだまだ苦手な私だが、この挑戦を成功させたら、きっとかなりの自信になると思う。これは人生のどこかでいつかやってみようと考えている。
 やはり私のロマンは音楽、そしてライブなのかもしれない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?