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140字小説3篇 「Angel」

【01. 天使】
初めてあなたを見て、翼をなくした天使のようだと思った。無垢で透き通った瞳、けれど世の穢れを知り尽くしているかのような達観をたたえていた。空へ還る術を失ったあなたを守りたいと俺は願ったけれど、きっと守られていたのは俺の方だった。愛していますと告げた俺に、あなたは一粒の涙を零した。

【02. 夢想花】
天使になったあなたが、秋桜に囲まれて微笑んでいる夢を見た。思春期の、危うげで繊細な感性をナイフのように尖らせていたあなたの横顔は美しかった。誰も寄せつけない孤高。けれど、ふと無邪気な笑顔を向けてくれる時もあった。ノートの切れ端にあなたが書いた詩を、今でも大切に持っているよ。

【03. 誕生】
ぼくが生まれてちょうどひと月後、もうひとりの天使がうまれた。ぼくは銀色の髪にひと房、紫色の髪がまじっているけれど、その子は金色の髪にひと房、桃色の髪がまじっている。かれがぼくの片割れだと本能的に悟った。かれのやわらかな手を握ると、天使のきざはしがぼくたちを待つ子のもとへ架かった。


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