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乳幼児向けの玩具、判断基準とは?

はじめに

この記事は「自作ボードゲームの対象年齢の考え方」の続きになります。海外のECサイトからコンポーネントをまとめて購入できないかの調査した内容を備忘録として記事にしました。

品目の確定

海外から輸入する製品が「乳幼児向けの玩具」であるか否か、食品衛生法、その他規制に該当するかの確認を行うためには、まず当該製品の日本側の税関により付与される関税分類番号(以下、HSコードという)を決定しなければなりません。このHSコードに紐づいて規制が参照されるためです。このHSコードは、日本側の税関によって、性状、材質、製法、形状、成分割合、構造、機能、用途等を総合的に考慮して判断されます。当該コードの確定は、輸入側税関が判定権限を有しており、税関の担当した者の裁量により決まります。ただし、事前教示制度の「文書による照会」を行っている場合に限っては、税関の公式意見であり3年間尊重され、覆ることはありません。(※1)

おもちゃに関して、東京税関に問い合わせしてみたところ、製法や成分割合は要件でなく、製造所(名前と住所)、写真、材質、塗料と可塑剤の使用有無について確認し、製品の用途、それを使用する製品の説明書(カタログ)がわかる資料(輸入する者が責任を持って準備したものでも良いらしい)を用意してから改めて相談するようにとの回答でした。

🔗HSコード(JETRO)

🔗事前教示制度(東京税関)

🔗輸入食品事前相談(東京検閲所食品監視課)

※1
文書による回答の他に、電話による回答、Eメールによる回答があります。これらの回答は輸入申告の審査の際に尊重されません。つまり、事前に聞いていた内容と実際の審査結果が異なる可能性があります。

乳幼児向けの玩具

食品衛生法では、「乳幼児が接触することによりその健康を損なうおそれがあるもの」として厚生労働大臣の指定するおもちゃについて、製造、輸入、販売、営業上の使用を規制していますが、すべてのおもちゃが食品衛生法の規制対象になるわけではありません。「乳幼児」 について、食品衛生法では具体的な年齢の規定はないものの、他法令の規定に準じて、6 歳未満を指すものとして運用しているようです。ただし、製品パッケージ等の対象年齢に係る表示だけでなく、その製品の意匠・仕様、パッケージ等の意匠、取扱い店舗・陳列場所等の販売形態等で、客観的・総合的に勘案して判断されるようなので、年齢に関する表記がないからという理由だけで、すぐに違反であるとは一概には言えません。

🔗おもちゃの輸入・販売手続き2020(ミプロ)

https://www.mipro.or.jp/Document/hti0re0000000vi2-att/pdf_publications_112toypu.pdf

🔗子どもの発育段階において与えるに相応しいとされる玩具の年齢別、種類別対応表(日本玩具協会)

https://www.toys.or.jp/st/pdf/st_kodomo_hatsuiku_nenrei_toy.pdf

コンポーネント

カードやタイルチップ、木製・樹脂製の駒、ダイスなどのボードゲームを遊ぶためのゲーム用具は、乳幼児向けのおもちゃと認識されるものか否かにより判断されます(=乳幼児向けの玩具でないと客観的に証明できれば問題となりません)。ボードゲームのセットで販売等されるものについては、当該ゲーム用の駒や札、サイコロやルーレット等の一式でひとつの玩具を構成しているものと扱われます。なお、一般的に普及している通常の将棋、囲碁、チェス、リバース等の駒、石及び盤、トランプ、花札などは、乳幼児向けの玩具と認識されていないことが明らかであるので、指定おもちゃの範囲に含まれないと示されています。また、2023年の執筆時点においては、鉛筆やクレヨン、マーカーなどの文房具類は基本的に玩具と見做されていません。

🔗器具・容器包装、おもちゃ、洗浄剤に関する情報(厚生労働省)

🔗指定おもちゃの範囲等に関するQ&Aについて(厚生労働省)

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/20090914-1_1.pdf

コンポーネントのみでは「乳幼児向けの玩具」と否定できないものの、ボードゲームのセットで販売され、明らかに「乳幼児向けの玩具」で無いことを認識できるのであれば、以下のようなコンポーネントが含まれていても、指定おもちゃに含まれません。

  • 木製、樹脂製のトークン
    積み木・アクセサリー玩具(1歳~)

  • 木製、樹脂製の駒
    乗り物がん具・動物がん具・人形(0カ月~)

  • おはじき
    おはじき(4歳~)

  • 文房具(色鉛筆、クレヨン、シール、ペン、マーカーなど)
    文房具類は規制対象でないため、問題なし

指定おもちゃと判断されたとき

東京税関の担当者により指定おもちゃと判断された場合、次のいずれかによる対応を行わなければなりません。

  • サンプル検査
    厚生労働省から認定されている機関にサンプル検査を行う方法です。検査に合格することにより、国内に持ち込むことが許可されます。

  • 積み戻し
    サンプル検査を行わず、輸出元に送り返す方法です。積み戻しが可能であるかどうかは輸出元や、仲介業者などの同意を得ている必要があります。

  • 産業廃棄
    税関立ち合いの元、産業廃棄処理が行える業者に依頼して廃棄する方法です。廃棄場所に輸送するのにも税関より許可を受ける必要があります。

いずれの対応も少なくない費用が掛かることになります。過去、問題なく輸入できていたとしても、数量によって対応を求められることがあるため、懸念があるのであれば輸入を見合わせるか、事前に検査を受けておくと良いでしょう。

まとめ

乳幼児向けの玩具であるか否かは、さまざまな観点から客観的・総合的に勘案され、個別に判断されるものです。特に海外から輸入するコンポーネント類のみを「乳幼児向けの玩具」ではないと示すことは手続きが煩雑で苦労しそうだということと、自作のボードゲームの対象年齢は安易に設定せずに、法的に問題ないか必ずチェックすべきだろうというのが個人的な見解です。

また、個人輸入に関しては「個人使用目的の輸入」、つまり個人が自分ひとりのために楽しむために輸入した物であって、それらをボードゲームのコンポーネントとして使って販売することは違法行為にあたるそうです。

安いからという理由だけで使用しないようにご注意ください。


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