見出し画像

ばね指について ゆっくり解説

#指 、#ひっかかる、#痛い、#伸びない、#曲がらない

こんにちは。手外科医のシロクマです。
年間400件以上の手術を担当しながら、手の外科疾患をお持ちの患者さんにより安全・安心・安楽な手術を届けるべく奮闘中です。

今回はばね指について解説します。非常に有名な病気ですが、実はどんな病気かよくわからないという方は多いのではないでしょうか。


ばね指の症状は?

ばね指の症状は主に下の3つが挙げられます。

①指のひっかかり
指を曲げ伸ばしする際に、ばねが入っているようなひっかかりが生じます。ばね指では指の付け根(手のひらと指の境目)あたりで屈筋腱と腱鞘の摩擦(後で説明します)が生じます。この部分、もしくはもう少し指先の方にひっかかりを感じる人が多いです。このひっかかりは本人が感じるだけではなく、見たり触ったりすると他人にもわかる場合が多いです。まれにひっかかりがあまりない方もいらっしゃいます。

②指(手のひら)の痛み
指の付け根の部分で手のひら側に痛みが出ることが多いです。痛みを伴わないこともあります。また人によってはPIP関節(第2関節)が痛いという方もいらしっしゃいます。

③指のこわばり
主に症状が長引いた人に多いですが、指の関節がこわばってしまい、他の指で押したりひっぱったりしても曲がらない・伸びないようになってしまう場合もあります。

ばね指はなぜ起こる?

ばね指は、腱鞘炎や弾発指ともよばれる指の病気です。

私たちは指を曲げたり伸ばしたりする際、腱という紐のような組織を使っています。

腱は骨に付着しており、筋肉を収縮させて腱をひっぱることで関節が動き、指の曲げ伸ばしができるようになっています。

指を曲げるのには手のひら側にある屈筋腱という腱を、指を伸ばすのには手の甲側にある伸筋腱という腱をひっぱります。

引っ張った際に腱が浮き上がってこないようにするために、多くの腱の周りは腱鞘というトンネルで覆われています。

ばね指ではこの屈筋腱と腱鞘の間で組織のサイズの異常が生じます。具体的には腱が腫れて太くなったり、腱鞘が腫れてトンネルの内径がせまくなったりします。

このため屈筋腱と腱鞘の間で摩擦が生じ、これが指の曲げ伸ばしの際のひっかかりを起こしたり、指の付け根の痛みが生じたりします。

病気が持続・進行すると徐々にPIP関節(いわゆる第2関節、親指の場合はIP関節:第1関節)の伸ばしにくさが生じてきます。

ばね指の原因は?どんな人に起こりやすい?

残念ながらばね指の原因は完全には解明されていません。

指の使い過ぎ(オーバーユース)とも言われていますが、それほど指を使わない人でも生じるため、単独の原因ではありません。

40~60歳代の女性がもっとも多く、女性ホルモンの影響があると言われています。しかし男性でも、また若い方や高齢の方でも起こるので、これも単独の原因ではありません。

また糖尿病患者さんや透析患者さんでも生じやすいと言われています。

このようにばね指は複合的な原因により生じていると考えられます。

ちなみにばね指の患者さんは非常に多く、私の外来でも毎日必ずお一人以上、初診で来院されます。病院を受診されていない方も含めるとさらに多くの患者さんがいらっしゃるでしょう。

よく患者さんからばね指はどう予防したらいいの?と聞かれることがありますが、原因が単一でない以上、これをすれば予防できる!という方法は残念ながらありません。しかしきちんと治療すれば治る病気ですので、症状が出た場合の大変さはもちろんありますが、あまり心配しすぎず、普段の生活を楽しんでいただきたいと思います。

ばね指の治療方法は?

ではばね指になってしまった場合、どのような治療法があるでしょうか。

まず第一に、ばね指はきちんと治療を行えばほとんどの方が治る病気です。あまり心配しすぎないようにしてください。ただし、症状が出てから治療を受けるまでに時間がかかりすぎたり、また適切な治療が行われていない場合は、その後治療を行っても症状が残存してしまうこともあります。あまり長引かせないようにするのが重要です。

治療方法には主に下の3つの選択肢があります。

①消炎鎮痛剤の内服や外用
消炎鎮痛剤とは読んで字のごとく、炎症を抑えて痛みを鎮めるお薬です。これらのお薬を塗ったり、飲んだりすることで、摩擦を起こしている腱や腱鞘の炎症を抑え、症状の改善をはかります。この後説明する他の方法に比べると治療による合併症が少ないことがメリットです。ただし効果はそれほど高くないため、これだけではなかなか症状が改善しないことが多いです。
また漢方薬を使用する先生もいらっしゃいます。私は漢方薬の処方経験があまりありませんのでこちらについては効果は実感していませんが、有効だとする論文もあります。

②ステロイドの腱鞘内注射
ステロイドは強力な炎症を抑える効果を持つ薬剤です。これを腱と腱鞘の間に注射する方法です。局所に強力な効果を持ったお薬をダイレクトに入れられるため、かなり高い効果があります。また注射後数日以内で効果が出ることが多いのもメリットです。一方デメリットとしては感染の恐れがあることや、繰り返し注射をすることで腱自体が傷み、腱断裂を起こしてしまうことが挙げられます。また一度よくなっても数か月ほどで症状が再発してくることもよくあります。

③手術
ひっかかりが生じている腱鞘を切開すると、ひっかかりは消失します。このため症状が再発する可能性は低く、根本的な解決となることが多い治療法です。手術は多くの場合、日帰りで局所麻酔で行います。所要時間は10~30分くらいになることが多いと思います。整形外科医のほとんどがやり慣れた手術だと思いますが、(特に親指では)神経を損傷する危険性もゼロではありません。デメリットとしては傷(手のひらで指の付け根部分)ができること、感染や創部離開などの合併症が生じる可能性があることが挙げられます。傷が治るのには1~2週間必要となるため、この間、水が使えない点が患者さんにとっては非常に不便だとよく言われます。

ここまでばね指について、病気の仕組みから治療法まで一般的な解説しました。外来でこの内容をすべて伝えるのはなかなか難しいので「ゆっくり解説」と銘打たせていただきました。
最後までお読みいただきありがとうございました。皆様の不安の解消に少しでも役立てば幸いです。(もしご参考になる内容がありましたら、ぜひスキマークをよろしくお願いします!)

※私の個人的意見を多く含めたばね指の深掘り記事を公開しています。内容は「どの治療をえらべばいいの?」「注射は痛い?」「手術の方法は?」などです。(個人的見解が非常に多いため、広く一般に見ていただくと誤解や間違った解釈を生じる可能性があると判断し、有料とさせていただきます)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?