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ヘバーデン結節について ゆっくり解説

こんにちは。手外科医のシロクマです。
年間400件以上の手術を担当しながら、手の外科疾患をお持ちの患者さんにより安全・安心・安楽な手術を届けるべく奮闘中です。

今回はヘバーデン結節について解説します。

指の第1関節が腫れたり、こわばったり、痛みが出たり、水ぶくれのようなものができている場合は、このヘバーデン結節の可能性があります。


ヘバーデン結節とは?

ヘバーデン結節は指の第1関節(一番先端の関節)が変形する病気です。

関節は骨と骨が直接当たらないように表面が軟骨で覆われています。この軟骨は時が経つにつれだんだんと擦り減ってきます。

軟骨がすり減ると周囲の骨は徐々に硬くなったり、余分な部分が膨らんできます(ホネのトゲ:骨棘といいます)。また痛みを伴うこともあります。

このような状態を変形性関節症と言います。膝が有名ですね。この変形性関節症が手の指で起こったものがヘバーデン結節です。

ヘバーデン結節は女性に多い病気です。30代くらいから、関節の腫れや変形、痛み、こわばりが出てくる方がいらっしゃいます。

ちなみに第2関節(PIP関節といいます)が同様に変形する病気はブシャール結節と呼ばれます。へバーデンもブシャールも医師の名前です。

ヘバーデン結節の原因は?

他の手の病気と同様にヘバーデン結節の原因は完全には解明されていません。

上記のように女性に多い病気のため、女性ホルモンの影響があるのではないかと言われています。

手の使いすぎだと言われていた時期もあるようですが、手の使用頻度と病気の発生には明確な因果関係はありません。ただし、この病気をお持ちの方は手を使いすぎると症状が強くなることはよくあります。

原因が不明のため、残念ながら病気を予防したり、進行を抑制できる明確な方法はありません。現時点では症状に対する治療をおこなっていくのが現実的となります。

尚、近年ではエクオールというイソフラボンが代謝されてできる物質が女性ホルモンの変化に伴う手の症状を改善できるのではないかと期待されています。医薬品にはなっていませんが、サプリメントとして発売されています。

ヘバーデン結節の症状は?

主な症状は以下の3つです。

①指の第1関節の変形


爪の付け根が盛り上がってきたり、爪自体に段差ができるような変形が出ることがあります。変形が強くなると、関節の動き自体が制限されることもあります。

②痛み


主に手をよく使う時に第一関節の痛み出ることがあります。症状の強い方では安静時にも痛みが生じることがあります。

③関節の表面にできる水ぶくれ

関節の表面や爪の根元に皮膚が薄くなり中が透けて見えるような水ぶくれができることがあります(粘液嚢腫と言います)これは関節の周りを覆っている関節包という袋が、関節の変形に伴って表面に飛び出してきたものです。

ヘバーデン結節の診断は?

外観と、レントゲン写真で診断します。レントゲン写真では関節の隙間が狭くなったり、余分な骨ができているのが確認できます。症状が出て比較的早期の方では、レントゲン写真ではそれほど異常が無いこともあります。

指が変形したり、こわばったりする別の病気として関節リウマチがあります。リウマチが心配で来院される患者さんも多くいらっしゃいます。ただし、変形が第一関節だけの場合は関節リウマチの可能性はかなり低いです。

ヘバーデン結節の治療は?

ヘバーデン結節と診断されたら、まずは保存的治療(切らない治療)を試みます。

第一関節のテーピングや装具

症状の改善に有効です。水ぶくれができている場合でもテーピングをしっかり行うと水ぶくれが凹んでいくこともあります。
ただし実際には常にテーピングをしておくのは難しいと思います。水仕事などの際にかなり不便でしょう。テーピングは夜間のみでも効果があることがありますのでお試しいただければと思います。
またテーピングと比べて簡単に着け外しできる装具もあります。

消炎鎮痛剤の内服

痛みでお困りの患者さんでは消炎鎮痛剤の内服も治療選択肢になります。痛みが強いときに頓用で、もしくは炎症を抑える目的で定期的に内服します。消炎鎮痛剤で変形が治ることはありませんが、普段の生活で痛みで困っている方は生活の質を上げる目的で使用する意義があります。
問題点としては、腎臓や胃・十二指腸への悪影響がありうることです。長期での使用を考慮して、これらの悪影響ができるだけ出にくい薬を選んでいく必要があります。

手術について

保存的治療を行っても効果が乏しく、生活に支障がある方は手術治療を検討します。手術には大きく2つの方法があります。

①関節滑膜切除、骨棘切除

変形性関節症では関節内に炎症を起こす滑膜が生じており、また余分な骨である骨棘が形成されています。これらを取り除く手術です。症状のところで説明した粘液嚢腫(みずぶくれ)がある方は、みずぶくれを切り取らず、その下に存在する滑膜・骨棘を切除することでみずぶくれが改善します。

②関節固定術

痛みが強く、日常生活での支障がかなり大きい方は、関節を鋼線や螺子などを用いて固定する関節固定術という手術が古くから行われています。
痛みをとる効果は強いですが、第一関節の可動性は失われます。このため初期のへバーデン結節の方にはお勧めしません。変形がかなり高度で、症状もかなり強い方は、関節固定術により痛みが改善し、日常生活の質が向上する可能性があります。

以上、へバーデン結節について、病気の仕組みから治療法まで一般的な解説をしました。外来でこの内容をすべて伝えるのはなかなか難しいので「ゆっくり解説」と銘打たせていただきました。
最後までお読みいただきありがとうございました。皆様の不安の解消に少しでも役立てば幸いです。(もしご参考になる内容がありましたら、ぜひスキマークをよろしくお願いします!)

※私の個人的意見を多く含めたへバーデン結節の深掘り記事を近日公開予定です。内容は「どの治療をえらべばいいの?」「エクオール補充サプリメントは有効?」「手術の具体的な方法は?」などです。(個人的見解が非常に多いため、広く一般に見ていただくと誤解や間違った解釈を生じる可能性があると判断し、有料とさせていただきます)

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