カンボジアに帰る君へ

カンボジアで日本人相手に観光ガイドとして働く為に日本語を勉強しにきていたラマー(仮名)。しかし、日本人相手にデキ婚してしまい日本で働く事になり、色々経てうちの会社に派遣社員とし働くようになった。

歳は30代半ば子供が4人、ついデキ婚したと言う割にその後3人も仕込みやがって、ただのスケベかよ、といつもからかっていた。マジで毎晩、奥さんを抱くらしい。世界的に見ると結構、普通の事で逆に日本人が淡白過ぎるらしい。

マナーに日本の印象を聞いてみると、

👨🏾‍🦲「日本人は喋らないですね!会話少ない!」

🤡「うーん、確かに今はスマホがあるから会話は減ったかもなぁ」

👨🏾‍🦲「カンボジアにもスマホあるよ!けど、みんなシャベッテル!スマホのせいジャナイ!」

🤡「すんまへん」なんか謝ってしまった。

なるほど、外人は知らない人同士でもよく挨拶して世間話をすると聞く。敵か味方を見分けることが必要な文化なのだ。日本人は元から島国特有の共同意識が強いので喋る必要がないのだ。この熟成し過ぎた共同意識が時には同調圧力ともなり弊害にもなる。

マナーの話に戻そう。マナーの風貌は、頭はハゲ隠しの丸坊主に顎ひげを蓄え、まるで逆さ絵のようだ。身長は170ちょいだがガタイは良い。本気で喧嘩したらすぐ負けるだろう。イカつい風貌とガタイだが、喋ると気のいい東南アジアの下ネタ好きの中年オヤジである。

所謂、外人の喋る日本語だけどもそれでも殆どコミュニケーションに問題は無いくらいに喋れていた。事あるごとに「オーマイガッ!」を連呼してた。因みにカンボジアの公用語はクメール語だ。イキって英語使うなよ、クソが。

🤡「マナー、オーマイガッ!て日本語で言うと何が1番しっくりくる?」

👨🏾‍🦲「んー、アンビリバボーですかね」

🤡「それ英語やないか!そんな仕込んでるネタで俺が笑うと思うなよ、糞が!」

マナーは爆笑しながら軽く僕の肩を叩いてきた。よく笑う男だ。

日本人の派遣社員よりももの覚えも早く、仕事に積極的に打ち込み残業も進んでやってくれた。

その大柄な身体に似合わず、優しく人に対して懐き易い性格は皆に愛されていた。そして何故か僕を恐れていた。「オーマイガッ!けんぽさん、に黙って見られると怖くて謝ってしまう」。それでも普段は僕の下衆なジョークによく爆笑していた。👨🏾‍🦲「オーマイガッ!けんぽさん、それ言ったらダメよ!🤣」

ずっとウチで働いて後に契約社員になってくれるものだと思っていたが、別れは突然にやってきた。カンボジアでの仕事が決まったので家族を連れて帰ると言うのだ。

本人と話をしていると契約社員にらなれると思ってなかったらしく、成れるならなりたかった、カンボジアに帰るよりいいよ!オーマイガッ!と半泣きになっていた。しかし、もうカンボジアでの仕事は決まってしまったので今更、変更は出来ない。我々の別れは決定事項である。オーマイガッ!

そして、別れの日がやってきた。

「1年と7ヶ月ドーモ、オセワニナリマシタ」

みんなの前で涙ぐみながら別れの挨拶をするラマー。

上司として僕からどうしても最後に言っておきたいことがあった。

🤡「ラマー、今までありがとうお疲れ様。最後に、これだけは言わせてくれ。君はカンボジアの人間だろ?カンボジアは仏教国なんだからオーマイガッはおかしい。これからはオーマイブッダと言いなさい。イキって外人ぶってんちゃうぞ!」

ラマーは泣きながら爆笑しながら僕の肩を痛みを感じるくらいに激しく強く叩いてきた。

ラマーよ、英語は苦手なくせに外人ぽく英語使ってんちゃうぞクソが!元気でね。あばよ!

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