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#1 ある週末

 私は7時に起きて少しだけジョギングする。当たり前だが冬は寒いので時計が鳴っても布団から出たくない日は多いし、週末くらい寝坊したいという誘惑に勝つのもそれなりに大変だ。でも、走らないで寝坊するとあとで後悔して一日なんとなく気持ちが沈んでしまったりもするので、布団のなかでよく暖まった身体が冷えてしまわないうちに一気に着替えて出かける。1時間弱ほど走って帰り、汗になった服を洗濯カゴに放り込んで裸でまた布団にもぐりこんでしまうこともあるが、今日はそのまま着替えて洗濯をした(洗濯機が)。

 お湯を沸かして朝ご飯を自分の分だけ用意してPCの前でメールやニュースをチェックしながら食べて少しすると洗濯機がピーピー終わりを告げる。

 物干し竿はアルさんが寝ている部屋のベランダにあるので、そっと部屋に入って洗濯物を干す。冬は朝と昼下がりの陽射しにあてて乾かすためにもできるだけ早い時間に干してしまいたいのだ。手足がすっかり冷えた。

 起きてきたアルさんは、自分も適当にご飯を食べてから私が散らかしたままにしていた食器やフライパンも一緒に洗ってくれた(なんとなく洗い物はアルさんの担当になっている)。その後は、音楽を聴きながら、私は仕事の準備などをし、アルさんは新聞を読んだり本を読んだりして休日を過ごす。

 昼下がりに「お腹減ってこない?」とアルさんが言うので、一緒にラーメンを作る。私が具材を準備する間にアルさんは鍋に湯を沸かして麺を茹でる、という連係プレー。いつも通り、食後の洗い物はアルさんが担当してくれるので、PCに向かって作業の続き。

 17時頃か、暗くなった頃に洗濯物を取り込む。

 17時半過ぎにアルさんが昼寝から起きてきたので、夕飯の支度を始める。食材をチェックして、とりあえず冷凍保存してあったものを解凍し、少しだけ作り足して夕ご飯。食べ終わって少し食休みの後、またPCに向かう…。洗い物は再びアルさんが担当。

 週末の一日目はあっという間に終わってしまう。

 さて、主夫の話をすると言いながら、さっきから今日自分がやった家事のことばかり書いているじゃないか、と思っただろうか?自分の配偶者が主夫であっても家事をしなくていいわけではない。私だって平日は出勤しているから、週末はもっとのんびりしたいと思うこともあるし、家事で時間が潰れてしまうと焦ってしまうこともある。でも、それじゃあ、主夫(主婦)だったら週末もなく、毎日家事労働をすべきなのか。

 世の男性たちは、どうもそう思っているようだし、なんなら「働いて養っている俺は偉い」と思っている節がある。しかし、働いて給料をもらっているのが偉いなら、家事労働をしているひとだって偉い。種類は違うけれど、どちらも労働で、どちらも疲れる。出勤がある分、平日の家事はアルさんにほとんどお任せにしているけれど、せめて週末くらいはできることやろうっていうのと、単純に料理と洗濯は好きなのでできるときはやるようにしている。

 もし、私が男性だったなら、平日は出勤して外で仕事をしてきて、週末は家事もやる「あら、いいダンナさんねぇ〜」という評価になるのではなかろうか?しかし、実際には女の私が家事をやっても誰も驚かないし、特に褒めもしない。むしろ平日に「夫が夕飯を作って待っています」に対して「やさしいダンナさんだねー」という言葉がかけられるのだ。いや、アルさんは確かに優しいけれど、もし男女逆だったら、主婦の妻がご飯を用意して待っていてもみんな当たり前だと思うんじゃない?「いい奥さんね」とはならないよね。むしろ何か理由があって夕飯の用意ができてなかったら「ダメなヨメ」呼ばわりになるんだと思うが、どうだろう?アルさんの家事に不満があるというよりは、周囲の評価に不満がある。なぜ日本社会は女が家事をするのを「自然」だと思うのか。そんなことも考えざるをえないのだった。

to be continued...


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