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「このチームだから、成長できた」三重バイオレットアイリス岩見佳音の物語【後編】#ものマガ

誰かの物語が走り出すハンドボールのwebマガジン、 #ものマガ

今回は、三重バイオレットアイリス岩見佳音選手の物語【後編】になります。前編をまだ読んでいない方は、こちらから↓↓

後編では、バイオレットでの経験をメインに自身の怪我や、支えてくれるファンについて記しています。

<聞き手:坂 柊貴/写真:©MARK THREE DESIGN>
※取材はオンライン(zoom)で行いました。


・初めての大怪我

ーー初のプレーオフを終えて、その後の調子は?

個人的にはいいパフォーマンスができていて、5月の社会人選手権では、公式戦で初めてスタメン起用をしてもらいました!ただ、その試合の開始5分くらいで前十字靭帯を切ってしまい…。6月には手術することになりました。

ーーそれはつらい…。そのときはどんな気持ちだった?

もちろん落ち込みました。でも、日本リーグとは時期がずれていたり、同じ時期にリハビリする選手もいて、割と前向きに気持ちを動かすことができました。

ーーリハビリ中のモチベーションはどのように保っていた?

チームメイトの支えがとにかく大きかったです!みんなが遊びに誘ってくれたりとか、ハンドボール以外のところでも気にかけてくれて…。本当に助かりました。あとは、自分が出場していた試合を観ていました。プレーを続けているときは自分のプレーを振り返る時間が少なかったから。コートを離れているときに客観的に自分を見ることで、「こうすればよかったのか!」とか違う発想が出てきて、それが楽しかったです!

ーーイメージトレーニングなどで、なるべくネガティブな気持ちを減らしていた

ただ、やっぱりネガティブにはなります(笑)。だから、何もしない時間をとにかく減らしました。自分の好きなことに打ち込んでみたり。ストレスを溜めないように注意していました。


・復帰初戦での勝利

ーーでは続いて…。2018年1月の写真です!

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これはNHK津が初めて試合の放送に入って。それと、初めてのサオリーナ(※)での試合で。さらに、ここが私の復帰戦で!さらにさらに、初めてメイプル(レッズ)に大差をつけて勝った試合で。

※【サオリーナ】2017年10月に開業した、三重県津市の屋内総合スポーツ施設。施設名は津市出身の元レスリング世界王者、吉田沙保里氏に因んだもの。(Wikipedia参照)

ーー色々なものが詰まった試合だった

私は7mのときしか出ていなかったけど、怪我から復帰して久しぶりの試合で楽しかったです。それに、とにかく人が凄いたくさん来ていて!試合も、それまでなかなか勝てなかったメイプルに点差をつけることができて。とても印象に残っています。あと、ザブングルの加藤さんがゲストで来ていたかな(笑)。


・チャンスをものにして、3度目のプレーオフへ

ーー最後の写真も素敵。2019年3月ですね!

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これもNHKが放送に入っていて(笑)。初めて1試合残してプレーオフを決めた試合です!同じ時間でSONYと北國銀行が試合をしていて、SONYが負けて私たちは勝てばプレーオフ出場決定という状況でした。ただラスト10分まで1点差で負けていて…。その状況で梶原さん(※)に「出番」って言われました。「え!いま!?」って思ったけど(笑)、その10分間は無失点で凌いで、私たちは2点決めてプレーオフを決めました。

※【梶原 晃(かじはらあきら)】三重バイオレットアイリス GM

ーーすごい!まさにヒーローですね!

NHKのインタビューも含めて、いろんな人に評価してもらいました。今までいいパフォーマンスを見せてもなかなか使われなかったこともあったけど、ここで自分のプレーを証明できたかな。次の週の北國銀行戦でも、スタメンではなかったけど、早い段階で起用してもらった。この日を境に出場時間が増えた気がします。

ーーチャンスをしっかり掴めたんですね。プレーオフはどうだった?

初戦がオムロンだったんだけど、チームとしては後半に3点しか得点できなくて…(笑)。でも、個人的にはベストゲームでした!私は後半から出場して10分間無失点で、セーブ率も60%を超えていました。相手GKの宮川選手は80%だったけど…(笑)。

ーー過去のプレーオフは怪我もあり出場機会が得られなかったと思うけど、コートに入るときは何を感じた?

「後半のスタートから」という指示をもらったときは、チームからの信頼を感じました。その上で、試合前は「すごい緊張するんだろうな」と思っていたけど、割と自然体で入ることができました。過去の試合でもそうなんだけど、いい試合ができるときはあまり記憶がなくて。悪い試合はよく覚えているんだけど…(笑)。それくらい集中していたし、点が入らなくてしんどい試合だったけど、すごく楽しめました!


・調子は上向きだったが…。

ーー6シーズン目の調子はどうだった?

エレナさんが出産で離脱することもあって、GKは私とシュウさんの2人になって。プレーオフでの活躍も評価してくれて、国体などの大会でも長い時間試合に出場することができました。個人的にもいい状態が保てていて、「今年こそは!」という気持ちでプレーしていました。

ーーただ、いい状態のときに2度目の怪我に見舞われた。

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怪我をする前までは試合でもスタートから使ってもらうことも多くて。自分でも期待できる年だと思っていたので、かなり落ち込みました。1度目のときでリハビリの長さも辛さも知っていたから、尚更ですね…。今年のリーグは新型コロナの影響でどうなるかわからないけど、来年は三重国体もあるので、それをモチベーションに頑張っています!

ーーリーグではチームを外からサポートすることになったけど、意識していたことはある?

コミュニケーションを多く取ることは意識していたかな。外からチームを見ていると、自分がプレーしているときの感覚と全然違くて。「こんなに静かなの!?」とか思いました(笑)。私は誰とでもコミュニケーションが取れるタイプなので、外から見たものをほかの選手にフィードバックするようにしています。

ーー外から見ることで学べたことは?

自分が実際にプレーしているときは、気づけていないことがたくさんあると感じました。なので、怪我して戻った選手が外からの視線を伝えることは大切だと思ったし、私もそれを実行できるようにしたいです!


・いまのチームの雰囲気が生まれるまで

ーープレー以外のことも聴かせてください!バイオレットはすごく雰囲気の良いチームだと思うけど、それはどこから生まれた?

私が最初に入団したときはすごくピリピリしていたんだけど…(笑)。2シーズン目から櫛田さん(※)がチームに来てからだいぶ変わりました。チームとしても「厳しくても楽しく」がコンセプトになりました。

※【櫛田亮介(くしだりょうすけ)】三重バイオレットアイリス 監督

ーーすぐにチームに浸透した?

最初はそんなことなくて…。やっぱり「ずっと厳しくやりたい」人もいる中に、笑顔とか楽しさを入れていくことは難しくて…。でも、チームでぐちゃぐちゃになりながら、ちょっとずつ受け入れていって。そういう意味で、メリハリはすごくあるチームだと思います!

ーーチームに長くいるからこそ見れたことですね(笑)。

長くいて本当に得してると思う(笑)。


・ファンがいてこそのハンドボール

ーー僕が2月に試合を観に行ったとき、試合後に選手とファンが楽しく会話している姿が印象的でした。

自分たちの今ある環境の大切さだったり、企業さんやファンの方など、支えてくれる人が多くいるからチームが成り立っていることを、チームが強くなっていく過程で感じるようになりました。そこは雑に考えてはいけないこと。自分たちがハンドボールをするだけじゃなくて、見に来てくれる人が楽しむためにハンドボールをしようと、チームとして動くようになりました。

ーーSNSの発信も活発ですよね!

「最前線でいたい!」というスタッフの想いに、選手たちも賛同している形ですね!あとは、SNSの発信が増えたことで、見られている選手としての自覚も個人個人で持つようになりました。自分が楽しいことを発信するだけじゃなくて、「これを見た人はどう思うのかな」というところまで考えるようになりました。今ではどの選手も素でできていると思います!

ーーホーム戦の雰囲気は、まさに「ホーム感」を感じた。

ホームのときは、たくさんのファンの方が来てくれることが本当に嬉しくて!!どこのホームと比べても、三重での試合は来てくれる人の感じが全然違います。ファンの方が私たちに話しかけてくれるのはもちろん嬉しいし、むしろ私たちから話しかける(笑)!

ーー会いに行けるだけじゃなくて、会いに来るハンドボール選手なんだ(笑)。

たくさんの人と喋れるから、どの選手もホーム戦は大好きです!


・#SAVEknee に込められた想い

ーー最近だとTシャツも出しましたよね!

トランジスタ寺野さんから急に「Tシャツ作ろう」って連絡が来て。「何のTシャツ?」って聞いたら「膝を守るやつ」って(笑)。バイオレットは膝を怪我した選手が7人くらいいるんだけど、それもあって作ることになりました。

ーーTシャツにはどんなメッセージが込められている?

キャラクターを見てもらったらわかるんだけど…。

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膝の怪我ってとても大きな怪我で、治るのも時間がかかるんだけど、この「ACL(膝前十字靭帯:anterior cruciate ligament)」のキャラたちは徐々に回復してるんですよね。だから、「絶対に治る怪我だ!」っていうことを伝えたくて。治って元の状態に戻れるから、絶対に諦めないでほしいという想いを込めてデザインしました。

ーー「C」は凄い跳べるようになってるもんね(笑)。

そうそう(笑)!必ず戻ってこれるから、元気が届けばいいなと思っています。怪我してメスを入れることはしんどいことだけど、自分もその先で今までとは違う自分を手に入れることができたから。「新しく羽ばたける」という意味も込めています!

ーーポップなキャラクターにこんな深い意味があるとは…(笑)

深いんですよ!こういうこと考えられるようになったのもバイオレットのおかげ(笑)。本当にこのチームが成長させてくれてると思います。いまのチームのみんな大好きですもん(笑)!


・ハンドボール人生を振り返って

ーー中学校から現在まで、長く続けてきたハンドボールから学んだことは?

大きく変わったなと思うことは、「一緒に闘うこと」かな。中学高校のときはプライドが高くて、調子が悪い時も「私が出なきゃ」と思っていたけど、特にバイオレットに来てからは、それが少なくなりました。GKは1人しかコートに立てないけど、試合を闘っているのは3人のGKとチームのみんな。決して1人じゃないということを感じました。

ーー一緒に闘っていることを感じたエピソードはある?

エレナさんが試合に出ていて、ミスしてシュートが決まってしまったときに、気持ちを切り替えるって意味でシュウさんと私にハイタッチしに来るんだけど。そのときは私が「支える側」だったから、どちらかといえば気が楽でした(笑)。でも、自分がいざ試合に出ると、GKって1人の時間が多くて。ミスをしたときは結構きついんだけど、そんなときにベンチを見ると、シュウさんやエレナさんが「大丈夫だよ」って顔をしてくれていて。そのときに、「1人で闘っているわけじゃない」ということと、「みんなで勝ちたい」という気持ちが強くなりました。


・これからの岩見佳音

ーーまずは怪我を治してからコートに戻ると思いますが、これからどんな選手になりたい?

「このチームだから成長できた」ということを証明したいです。私は高卒でバイオレットに入ったけど、周りのチームを見てもほとんどの選手が大学からで。高校からでも成長できる、活躍できるっていうことを証明したい!高校生の希望になれるような選手になりたいです!

ーー最後に、ファンの方へメッセージをお願いします!

支えてくれる方がいるからこそ、チームもスタッフも選手も今があると思っています。私も7年も続けてこれて、怪我からも復帰できました。本当にありがたいし、自分自身も勇気づけられています。これからも応援してほしいし、一緒に闘っていけたらと思うので、これからもよろしくお願いします!

ーー取材は30分の予定だったけど、1時間半かかってしまいました(笑)。ありがとうございました!

ありがとうございました!



・おわりに

岩見選手の過去と現在、そして未来について。様々なエピソードを交えて語っていただきました。これからリハビリを乗り越えて、さらに成長して戻ってくる岩見選手を楽しみにしたいと思います!

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