見出し画像

平成さよ

少し前に、芥川賞作家の発表があった。

そのときのノミネート作品である古市憲寿『平成くん、さようなら』は以前から読んでみたかった。

個人的には、すごく読みやすくて時間のあるとき1日で読み終えてしまうほどだった。比較的に簡易的な言葉遣いで、平成生まれの若者にはイメージしやすい描写が続く。

平成という時代がどういう時代であったかを振り返るとき、合理的であることを良しとされ、どこか無駄なく能率的であることを求められる時代であったと思う。

令和になり、ますますそのスピード感は増していく。これまで時間がかかっていたような何かは科学技術の進歩なのか、人工知能の発達なのか、その何者かによって、あっと驚く間に事を終えてしまうかもしれない。

しかしながら、ここでのテーマはそのような時代を描くことではなく、全人類的な課題である生死を扱っている。時代がどれだけ進歩して変化していこうとも、特に人間の死という普遍的命題には我々は向き合っていかなければならない。そんなことを考えさせられた。

「人は図らずも、誰かが生きていた記憶を背負ってしまうことがある。自分の死によって、他者の記憶が永遠に失われてしまう場合がある。淡白で合理的な死生観を持つ彼が、そのことに気付いてくれたことが嬉しかった。」

これだけ読むとどこか不思議な薄気味悪い文章に見えてしまうが、この文章に、この作品の訴えたいことが詰まっているようにも思えた。

平成さよ

是非、ご一読を。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?