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肌に優しい多機能・高性能な生体ドライ電極技術を開発!Araki,...,Sekitani et al., Advanced Materials Technologies 2022.

大阪大学産業科学研究所の荒木徹平准教授(応用物理学コース協力講座)、植村隆文特任准教授(常勤)、和泉慎太郎招へい准教授、関谷毅教授らの研究グループは、伸縮性(最大16倍伸長)や透明性(可視光透過率85%以上)に優れ、皮膚に安定して密着する生体ドライ電極を開発しました(下図)。この生体ドライ電極は、エラストマーと導電性高分子のネットワーク制御により、皮膚への優れた導電性を示します。その結果、生体ドライ電極をもちいた薄膜センサシートは、生体電位を無線計測する試験において、医療機器レベルの信号の質を示しました。さらに、量産を見据えた製造プロセスを利用していることから、薄膜センサシートの実用化が近づいています。

図1. 生体ドライ電極と薄膜センサシートのイメージ図(EEG: Electroencephalogram、脳波図。PPG: Photo-plethysmogram、光電式容積脈波図。)

近年では、ウェアラブルデバイス向けとして、生体適合性や生体親和性を向上させた生体ドライ電極が開発されています。しかし、生体/電極界面での接触抵抗が高いため、生体電位計測時には数~数十μV程度とノイズレベルも高くなっていました。その結果、特に脳波などに含まれる微小な生体電位を計測することが困難になっていました。

今回、研究グループは、生体安全性のある導電性材料中において、相分離現象を誘発する高分子ネットワーク制御技術により、生体ドライ電極と皮膚との接触抵抗を低減することに成功しました。これにより、医療機器材料と同等な低ノイズな信号伝送性能(0.1 μVオーダー)を得られる生体ドライ電極が得られました。相分離現象による構築したミクロな構造は、伸縮性・透明性・信号の質を高める特異点を発現するだけでなく、皮膚に優しい易粘着力を得るためにも役立っています。

また、生体ドライ電極を内蔵する薄膜センサシートは、脳波による睡眠ステージ判定や、筋電による手指動作判定などの遠隔計測システムの一部として、実証可能性が示されました。さらに、透明性の高い薄膜センサシートは、カメラ式光電式容積脈波記録法による脈拍・血中酸素飽和度の遠隔計測も妨げません。近い将来、これら材料、デバイス、システムの技術が、全く新しいエレクトロニクス・デザインとして、疾患の診断・治療のための効率的な次世代パーソナルセンサへ応用されることと期待されます。

本研究成果は、2022年7月19日独国科学誌「Advanced Materials Technologies」に公開され、プレスリリース致しました。また、本研究関連の論文誌表紙が11月上旬に掲載される予定です。

より詳しくは、以下のプレスリリースの記事をご覧ください。

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