氷川透「最後から二番めの真実」読了



デビュー作「真っ暗な夜明け」に続いて、ロジック本格ミステリ好きのミステリマニア向けの講談社ノベルス刊行作。「真っ暗な夜明け」で論証する中で森博嗣みたいなこと言ってるなと思ったら、そのままずばり森博嗣の名前と引用が出てきて影響下にあるのは納得。マニア向けのロジック本格ミステリとは言え単なるパズル謎解きゲームには陥らず、メフィスト賞の源流・京極夏彦や森博嗣のようなペダンティックな文章とキャラ立ちした登場人物描写が巧みで長編一作に仕立て上げている、そこが作家・氷川透の魅力の一つでもある。謎解き要素にこだわりすぎたあまり、パズラーと称し下手っぴな文章でクイズ本のような短編ミステリがもてはやされる現代の国内ミステリシーンなんてクソくらえ。おまえはクイズ出題者か?なぞなぞ愛好家なのか?往年の氷川透の長編一作でも読んで、長編ミステリ小説の何たるかを思い知れ。一昨日来やがれ。今作もお嬢様言葉の名探偵・祐天寺美帆を中心に、後期クイーン問題について語り合う作中人物や逆さ吊りで下着丸出しの女子大生の死体、ドアの開閉記録が記録されるセキュリティシステムと言ったミステリマニア大喜びの過剰フィクションのオンパレードで面白い。探偵役・氷川透の推理は推理の美しさにこだわる名探偵・祐天寺美帆の推理の論証から入って氷川の推理に論理的な欠陥はないのかを避けるためか、推理披露前にエラリー・クイーンのなんたらの悲劇みたいに先に犯人に襲わせて確実に殺人未遂で警察に捕まえさせていたのも印象的だった。