千澤のり子「シンフォニック・ロスト」読了




女性作家ミステリーバトル2011、草食男子ミステリー。講談社ノベルス刊行。中学吹奏楽部のホルン奏者を主人公に、部活動にかける青春と恋愛、そして殺人事件をからめた人間模様が描写される青春ミステリ。二つのあるトリックが作中物語に破綻のないように計算尽くしの超絶技巧で違和感のないように掛け合わされており、結末で明かされる真相に驚愕必至。

一方で、あるトリックありきの構成のために登場人物複数人の描写が正気を逸したサイコ気味になってしまうのはこの著者の傾向としてやはり気になるところ。「最初で最後の勝負」をするほど一途な想いを抱いていた人が、よりによって勝負直前に吹奏楽部関係者と関係をもってしまって「汚れてしまっている」ことになる展開には唖然とした。