島田荘司「斜め屋敷の犯罪」読了


1982年講談社ノベルス刊行。

メイントリックのためだけに作られた舞台となる斜め屋敷こと流氷館。
明かされてしまえば、トリックは至ってシンプルなのにバカミスにならずレジェンド扱いされるのはやっぱり「読者への挑戦」までに丹念に執拗までの伏線が描写されるし、ミステリ面以外での物語を盛り上げる島田荘司の筆力は大きかった。

絶海の孤島や吹雪の山荘のクローズドサークルってわけではないのに、事件が起きて第1の殺人事件が起きて警察が介入するのに関係者は避難するでもなく警察関係者と一緒に館に泊まり込むのに、第2の殺人事件が起きるというのがまずおもしろい。警察にはどうにもならず第2の殺人事件が起きて後半になって我らが名探偵・御手洗潔が参加するわけだけど、そのあとも警察関係者ともども不安で怯え続けてまで宿泊し続けるのは滑稽。現に後々のあれがあるからなおさらね。御手洗は変人まがいの言動と行動で「気違い」「クルクルパー」「狂人」と放送禁止用語並みの酷い言われようだけど、読者としてもしょうがないなって思わせるクレイジーさ。でも奇行まがいのこれらすべてすべてすべてが解決編で犯人と対峙するための正気の正論であったことが明かされるのには本当脱帽した。どれだけクールでかっこいいんだ御手洗潔!第1の殺人事件もメイントリックのブラフとして活きてるし、たとえば序盤の棒だったりちょっとした気付きの描写の全部が整合性をもって説明されるので解決編の読後感がとにかくすっきりして気持ちいい。
あと1982年昭和57年刊行で小説世界の年代も大体同じということで、嫌らしいおじさんや女の戦い描写、犯人の動機と、すべて過ぎ去ったあのころあの当時の昭和ってことで今だからこそ個人的には納得してしまえた。大傑作。