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自分の道を選ぶ

コーヒーが好きだ。
カフェイン耐性が低く、1日2杯ほどにとどめているが、許されるなら1日中だって飲んでいられる。

先日、出先で訪ねたコーヒー屋さんで高校の同級生と再会をした。
正確には高校と大学の同級生。
高校2年の頃に同じクラスになり、同じ大学の同じ学科に進学した。
さほど仲が良かったわけでは無いためあまり思い出はないのだが、県外の大学の40人の学科の中に、同じ学校から進学した人がいたということはそれなりに心強かった。
同じ学科のよしみでたまに飲みに行ったりしてた気もする。

しかし、いつの間にか彼は大学からいなくなっていた。
授業を休みがちになり、姿を見ない日が増えて、ある日「あいつ大学やめたよ」と小耳に挟む、大学生あるあるって感じの消え方。
特に連絡を取ることもなく、そのまんま。

その彼が、コーヒー屋のカウンターの向こうにいた。

ちょっと困ったように笑う表情で彼だとわかった。
名前を名乗り、「覚えてる?」と聞くと覚えていてくれていた。奇跡である。

どうやら大学を辞めて、東京のコーヒー屋さんで正社員として働き、東京や広島の店舗で修行をして福島に帰り、いまは独立して焙煎士としてコーヒー屋さんを経営しているらしい。
数年前に結婚したそうで、仕事も私生活も充実している様子が伝わってくる。

同じ化学科にいた友人たちは、多くが研究者などの職についた。
研究者でなくても、何かしらの化学に関わる仕事をしている人が多い。

そのなかで、化学の道を外れたという点で、彼とわたしは同じだった。

わたしは在学中に妊娠した時、絶対に大学は卒業すると決めていた。
それと、教員免許を取ることも絶対に諦めなかった。
(この2つについては夫とかなり衝突した。嫌な思い出ばかり。)
結果として、卒業後は教員免許を活用して仕事に就いたし、いまもそれに助けられているから、わたしの選択は間違いじゃなかったと胸を張っていえる。

彼は化学よりやりたいことが見つかった時、大学を卒業することにはこだわらなかったそうだ。
それよりも、好きなことを追求するために、大学を辞めた。
結果的にいま自分の焙煎所と店を持ち、好きを仕事にしている。

何を大事にするかはそれぞれ違ったけど、大事にしたものに支えられて私たちは生きている。


わたしが大学に復学したころ、毎日のように夫から「大卒がそんなに大事か」「教員免許なんてとってる暇があったら店のことを手伝え」といわれ、自尊心も何もなくなりそうだった自分がいた。
専門卒で、20代のうちから自分の店を持っていた夫には、母になったわたしが大学を卒業したいと思うのは贅沢に感じたのかもしれない。

だけど、あのときギリギリの気持ちの中で、幼い長男の預け先を探し、教職のための講義に出て、長男が寝てる合間で卒論を書いて卒業したわたしの頑張りは、今のわたしを支えている。

何を大事にするかは人それぞれ。
だけど、絶対に譲れないと思って手にしたもので、人生は強く支えられていくのだと思う。


彼のコーヒーは感動的に美味しかった。
大事に大事に引き出された味がした

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