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新しい命のはなし

女の勘、というのだろうか。
産後半年にして突如乳腺炎になり、39度の熱が2晩続いた。
息子の全面協力のもと、完全復帰した翌日に、ふと何かが気になった。

1度目の妊娠を確認した時に買った2本入りの妊娠検査薬。
確か1本余っていたはずだと探し出して使用したそれには、はっきりと陽性のラインが浮き出ていた。

勘付きはしたが、青天の霹靂といった妊娠だった。
いつか息子に妹か弟が欲しいとは思っていたが、考えていたよりも早く赤ちゃんがやってきた。

お腹に再び命が宿ったと確信した時の気持ちは、言葉では説明しづらい。
新しい命に出会えることの喜びと、まだまだ赤ちゃんの息子とゆっくり過ごせる時間が期限付きになってしまったことの寂しさ。
正直に言って、まだ胎嚢のお腹の命より、目の前の愛する息子の方がわたしには大事で、すごくすごく、切なくなった。ニコニコと笑う息子を強く抱きしめた。

そこからは、あっという間。
妊娠初期特有の眠気と戦いながら卒論を書き上げ、ツワリに真っ青になりながら息子に離乳食を与え、定期的にトイレに駆け込みながら接客をした。
ツワリで何を食べても戻してしまい、身体の中で新しい命を育て、同時に息子にがっつり授乳し続け、これは自然の摂理に反していると強く思った。
最中は必死だが、思い返すとかなりカオスな日々である。そもそもツワリと飲食業は相性が激悪い。

ちなみにツワリ最高潮の時に妊婦検診で貧血検査をしたが、未だ頻回授乳+妊婦のくせに貧血には全く引っかからなかった自分は割と最強人間なのかもしれない。

気付けば安定期に入っていた。
エコーには元気に動き回る赤ちゃんの姿がうつり、顔立ちまで見えるようになった。わずかながら胎動も感じる。早い。これが経産婦か。

やっと、新しい命の誕生を、心から楽しみに思えるようになった気がする。
2人の子どもを夫婦で育てるために、生活リズムや各々の仕事の在り方も見直した。
少しずつ膨らんできたお腹を撫でながら、次もどんなに可愛い子がやってくるのだろうかと幸せな気持ちになる。

しかしやはり妊婦メンタルは不安定だ。
定期的に息子を抱きしめてオイオイと泣く。
息子と2人で過ごす時間がとても愛おしくて。息子が生まれてからの9ヶ月間が辛くて大変で、幸せで幸せでたまらなかったから。
息子1人だけに愛情を注げなくなることが切なくなる。

こんな気持ちも今だけだろう。
これから生まれ落ちる命は、きっと息子と同じくらい愛おしくて、わたしの宝物は2倍になる。

だからこそ、今の幸せも大切にしよう。
明日も息子をたくさん抱きしめよう。たくさん話しかけよう。
愛してるよはこれからずっと伝え続けよう。

不安は拭えない。
息子が生まれる前だって、不安で不安でたまらなかったけど、なんとか子育てできているし、今とても幸せに感じる。

1年後の私にこのノートを読んで笑って欲しい。
2倍の幸せがきっと待っている。

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