バイバイ、ガスコンロ。


一週間前に引っ越しをした。


引っ越した理由は沢山ある。


職場から1時間くらいかかるから、
今年が契約更新だったから、
もう同じ所に10年住んでるから、
綺麗なオートロックの所に住みたいから、


理由は沢山あるけれど

私は変わりたかった。
曖昧な、それでも何より大切にしていた人がいた。
振り回されてもしがみついてたのに、
突然振り切られて放り出されて、グズグズになっていた自分から変わりたかった。


というのが本音だった。


職場はまだ変えられない、
車もまだローンが残ってる、
整形するほどの変身願望はない、
髪はこれ以上切ったら角刈りか坊主にしかならない。


今の自分が出来る変化させられるものの中で
変化率が高いもの。
それが引っ越しだった。

場所が違う
階数が違う
広さが違う
年数が違う


全てが変わって新鮮だった。


私にとって一番大きな変化はキッチンだ。
ガスコンロからIHヒーターへ
長いこと親しんだガスコンロと使い勝手が違いすぎて戸惑った。


IHは火加減が見えない。
全部数値化。
弱めの中火って何番なのか。


毎日お弁当に卵焼きを入れる私にとって
この火加減の不可視は死活問題だった。
試しにすぐIHで卵焼きを焼いた。


IHはガスに比べてムラがない。
ピーっと音がしたら加熱が始まって、
全体が満遍なく熱されていく。
鍋を離すと安全の為に加熱が止まる。


フライパンに流した卵液も均等に火が入っていく。
巻いた卵はそれはそれは綺麗な黄色。
色ムラが出来ることはなく、つるんとツヤツヤ。
ちょっとした火加減に振り回されることなく、
じんわり焼いていく。


それは私にとって非常にもどかしく焦れったかった。


手早く煽るとフワフワになったり、
火から離して調整が必要だったり、
水分が飛びすぎて焦がしたり…
ガスコンロは毎回違った。


それに比べてIHはフラットだ。
同じ数値で同じ熱量でいつでも満遍なくなんて
何だかつまらない気がした。
赤い火や青い火で強く熱してほしい。


でもそれじゃあ何にも変わらない。


火加減に振り回されて上手くいかなかったじゃない。
ムラがひどくて何がベストか分からなかったじゃない。
火がつかないと意地になってコックを捻ったじゃない。


それに比べて、例え目に見えにくくても熱は感じる。
いつでも私のアクション一つでいつでも同じ熱量でムラなく熱してくれる。
手入れも簡単で扱いやすい。


そう考えると私に向いている気がしてきた。
出来上がった卵焼きは少しだけ緩くてキレイだった。


大丈夫。


火加減に振り回されることも多かったけれど、
本当に大事にしてきた。
もっと長い付き合いになると思ってた。
でも、変わらないものなんてない。
私はこれからIHで卵焼きを焼く。


バイバイ、ガスコンロ


私は変わるよ。

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