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生まれて初めて書いたラブレターを、初恋の人に渡した話。

今日は、ラブレターネタを書くのにはうってつけの日。
だって今日は、恋文の日だそうで。
523(こいぶみ)らしい。

私の青春時代の告白方法は、ラブレターだった。

携帯電話(もちろんガラケーである)を持ったのは、高校3年生。
ポケベルは高校2年生の時に初めて持った。

それまでの学生の連絡手段は、家の電話か手紙。
ただ、家の電話は仲の良い子としか話さない。

そうなると、告白の手段というのは限られる。
口頭か手紙かの二択だ。

面と向かって告白する勇気はなかった。
あと、面と向かって告白すると、返事すぐくるじゃん。
それが嫌で、結果が先延ばしになるラブレターを選んでいた。

初めてラブレターを書いた相手は、中学一年生のクラスの男子。
彼をニシウラ君(仮名)としよう。

ニシウラ君はクラス委員をしていて、頭が良くて、誰にでも丁寧で優しい。
外見もメガネをかけていわゆる塩顔系で、私好みだった。

ある掃除の時間、机を椅子の上にあげようとした私。
当時はがりがりで痩せていた私は力がなく、おまけにドジも発動して、椅子を机から落としそうになった。
すると、それを見ていたニシウラ君が、ひょいと椅子を持って手伝ってくれた。

男子に優しくされた経験があまりなかった私は驚いた。

また別のある日。
家の近所を歩いていたら、自転車のニシウラ君とすれ違った。
彼は律儀に私にお辞儀をしてくれたのだ。

めっちゃ丁寧で優しい人だなあ。
こうして私は、ニシウラ君に恋をしたのだ。

中学一年生の春のことだった。
初恋である。

しかしまあ、話しかけるチャンスがない。
中学なんて、男子と女子が話しているとすぐに噂になるからな~
ニシウラ君と噂になりたくない、のではなく。
私と噂になって、相手に迷惑をかけたくない。

こうしてニシウラ君に話しかけられないまま、時だけが過ぎた。
それからニシウラ君に恋に落ちて、1か月くらい経過。

私は良いことを思いついた。

「よし、告白をしよう」

なんでその思考に至ったのかわからない。
でも、待ってても相手が来ないんだから自分から行こうと思ったのだ。
その結論が、告白である。
元気だな、中学生女子。


私のプランはこうだ。

ニシウラ君を放課後の教室に呼び出す(わたし達以外誰もいないこと前提)

私が告白をする(果敢にも当時は口頭で伝えようとしていた)

返事もらう。

結果がわかる。

プランというほどではないけれど、こういう流れにしたいと思った。

まずは、ニシウラ君を放課後の教室に呼び出さなければいけない。
教室で話しかけるのは、非常にハードルが高い。それなのにさらにハードルが高い告白をしようとする意味がわからないが。

そもそも、放課後に教室に来てと呼び出すことが不可能では?

そう思っていたが、ひとつだけチャンスがあることに気づく。
それは、掃除の時間である。

掃除の時間になると、クラスメイトはみんな一斉に、自分の机を後方へ移動させる。

その時、さりげなくニシウラ君に近づいて、「今日の放課後に教室で待っててほしい」と言えばいい。

しかし、この声が周囲のクラスメイトに聞こえたら厄介だ。
そこで私は、「今日の放課後に、教室に残っていてください」と紙に書いた。
それをニシウラ君に渡せばいい。
これで会話は聞こえる心配はない。

すぐに作戦決行。
ノートの端に「今日の放課後に、教室に残っていてください」と書く。
それを破り、小さく折りたたむ。
片手で隠せるサイズになった。

掃除の時間、さりげなくニシウラ君に近づく。
でも、いざ渡そうとすると、どうしたらいいのか分からない。
「これ」と渡して、拒否されたらどうしよう。
悩んだ末、確実に受け取る作戦が浮かんだ。

「これ、落としたよ」

そうニシウラ君にいい、紙を渡す。
落とした記憶はないにしても、一応、中身は確認するだろう。

そして、ニシウラ君に紙を渡すことに成功。
チラッと確認したら、中を読んでいることも確認した。

なにこれ……スパイのやりとりなの?

なんだかもう告白前に、だいぶ疲れてしまった。

周囲から悟られず、尚且つ本人にだけ気づいてもらう。
そして、伝えたことを確実に伝える。
これがどれだけ大変なのかを思い知った。

その日の放課後。
ニシウラ君は、なかなか教室にやってこなかった。
教室には私一人きり。
絶好の告白のチャンスだというのに。

呼び出して、ニシウラ君が帰ってしまうような人だとは思えない。
突然だったから、何か用事があったんだろう。

でも、今日、告白する気分だったんだけどなあ。
明日以降だと、この勇気はしぼんでしまいそうだ。
つまり、私はこの時、かなりハイテンションだった。

だから、ノートを破り、「好きです」みたいなことを書いた。

それをニシウラ君の席に入れ、家に帰った。
手紙にするなら、かわいい便箋で書けばよかったと後悔。
でも、何よりも伝えたいことを伝えられたので満足。

次の日、また私はニシウラ君を放課後の教室に呼び出した。
昨日と同じスパイ作戦をつかって。

だけど、昨日と違ったのは。
私が紙を差し出した直後、ニシウラ君は何かを悟ったようにもらってくれたことだった。
まあ、この作戦、二度目だからね。

こうして、その日の放課後。
私とニシウラ君は、教室に二人きりになれたのだ。


長くなったので後編に続きます。

後編はこちら↓


https://note.com/hanawanabi/n/nead41cba985b

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