煩悩(15)あなたの嫌いなところ

突然の主観ですが、西野カナが苦手でした。前回の煩悩で書いたように、真正面から「好き! 大好き!」と言えない私にとって、ずっと前から君が好きでした~とか、もっと愛の言葉を~聞かせてよ私だけに~とかのストレートな歌詞にある種の拒否反応を示していたのかもしれません。

彼女の歌を好きな方は、今回の煩悩はおすすめしません。

そんな西野カナの歌に「あなたの好きなところ」というものがあります。その曲名どおり、自分の彼氏の好きなところをどんどん羅列していく歌です。

これだけで歌になってしまう、できてしまう、すごいと思います。もちろん、良い意味です。

5年目の彼氏には好きなところも、嫌いなところもたくさんありました。私が変に刺激を求めてしまったせいもありますが、最終的な決め手のひとつとなったのが「嫌いなところに目をつぶれなくなってしまった」ことです。

たとえば、5年目の彼氏の好きなところをみていきましょう。まず顔、話が上手いところ、ウィットに富んでいるところ、趣味が合うところ(電気ネズミ系や配管工オジサン系をはじめとする、無類のゲーム好き)、手先が器用なところ(大抵のものは修理できる)、並んで待つことが苦ではないところ、移動中に隣で私がグースカ寝ていても全く怒らないところ、基本的にめちゃくちゃ優しいところ……など。

いい人なこと、伝わります? そう、基本的にめっちゃいい奴です。

さて、5年目の彼氏の嫌いなところ。時間にルーズなところ(大体待ち合わせには遅れる)、論理が成り立たないことに不快感を示すところ(うまく説明できないとすぐに詰めてくる)、極度な面倒くさがり(人のことは言えませんが)、そして、人を見下したり馬鹿にしたりするところ。

私個人的に、最後の部分がどうしても許せませんでした。私に対してもそうですが、自分の友人に対しても普通に悪口を言う人でした。

もちろん、これは私個人の采配ですし、彼なりの好きな人に対する愛情表現だったのかもしれません。私が、理解できなかったというだけで。

実は、大学生になったくらいで「あれ?」と思うときがありました。それを覆すほど、私は5年目の彼氏を盲目的に大好きだったのです。

この状態を「地獄への天秤」と命名。本当の重さを理解できず、好きが嫌いを上回っている状態です。

まさに、この天秤のせいで「好きなのに、嫌い」という混乱してしまう時期を生んでしまいました。ここは猛省している点です。

ちょくちょく登場する私の両親は、とても仲良しです。結婚したキッカケは知りません。ですが、尋ねたところ「今でも嫌いなところはあるけれど、我慢できないものはないよ。それは相手だって同じだろうし」と話してくれました。飲みこんだ上での結婚だったのでしょう。この二人から生まれてよかった私。

彼(もしくは彼女)に、嫌いなところがひとつもない! と思っている方。ほんのごくごくごく一部の遺伝子的に結びついたカップルを除き、そんなことは殆どありません。

どんなに仲の良いカップルでも、我慢して生きています。ソースは我が両親。

大事なことは「あなたの好きなところ」よりも「あなたの嫌いなところ」。お付き合いの中で、相手に嫌いなところが出てくるのは当たり前です。育った環境が違うのですから。それを、我慢できるか、できないか、その見極めが大事なのです。

すごく当たり前だと思いますか? 残念、圧倒的な「好きだなぁ」という感情の前にすると、嫌いという感情を抱くことすら罪に思えてしまうものなのです。

どうしようもなく好きになって、相手を知りたくなってはじめて、お互いに嫌いな部分が見えてきます。そのとき、分岐に立ったと思ってください。

大丈夫、嫌いになることは怖いことではありません。

嫌いになったことで、好きになった過去が消えるわけでもありません。

好きなことが、嘘でも、偽りでもありません。

大丈夫です。

相手のことを大好きに思っている人にこそ、読んでいただきたい煩悩でした。

私のいちばん好きなラブソングは、いきものがかり「コイスルオトメ」です。あの歌詞きくだけでキュンキュンですよ、もう。

別れてから、一度も聴いていませんけど。

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