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製薬業界の事情を考慮したマーケティング予算最適化をすることで投資対効果を最大化します。

株式会社piponの北爪です。
今回の記事では製薬会社のマーケティング予算最適化についてご提案します。

予算最適化の課題についてよく使われるのはMMM(マーケティングミックスモデル)と呼ばれる手法です。

これは、媒体ごとに投資した金額と売上を用意してMMMに入れると、媒体ごとのROIカーブを算出することができる便利な手法です。

マーケティング予算を増やせば売上が増える、そんなことは誰でも知っています。予算を増やして行った先にどこで投資対効果が頭打ちしてしまうのか、それを探ることができることがROIカーブが素晴らしい点です。

様々な業界で使われているMMMですが、これをそのまま使うには、製薬業界には特有の課題があります。

それは「MRのディテーリングやウェブ講演の効果はすぐには現れない」ということです。

オンコロジー領域のように検討・検証に時間がかかる領域ではMR活動と処方の間に半年以上の期間が経過することもあります。

そのため現在出ている処方はMRのディテーリングやの結果なのか、判別つきづらいのです。

また、製薬会社の把握している処方数というのは、薬局から在庫が出ていった日の記録しかありません。

処方箋をもらってもすぐに薬を受け取らない人も一定数います。
そうすると
MR活動

医師の処方

処方箋を一定期間経過後に薬局に持っていく

薬局で在庫が動く
となり、ここでもMR活動と処方の影響を解析するのに難しくする原因になっています。

「MRのディテーリングやウェブ講演の効果はすぐには現れない」ということは、こういった活動の効果というのは消えて無くなってしまう訳ではなく、効果は溜まっていき、後々影響を及ぼす、アドストックと呼ばれる概念も考慮に入れるべきです。

以下のような関数を近似して、一定の期間後に効果が出るモデルを採用することでより現実に近いモデルを開発できます。

効果が出るのはどのくらいの期間かかるかを推定する。

【技術的な話】
アドストックの推定は、ROIカーブを関数で近似することで、投資の効果を測定します(関数型には、Geometric型とWeibull型の2つがあります)

また処方数の上昇トレンドや下降トレンド、季節性といった「処方全体の方向性」の影響を考慮できるモデルを作成する必要があります。

【技術的な話】
トレンドはデータを任意の期間に分割し,その分割内で異なる回帰を行います。(piecewise-linear trendと呼ばれる方法です)
休日やイベントの有無といった変数をモデルに含めることで、それらの効果が測定できます。

アドストック、トレンド、イベントや休日の効果の線形結合(それぞれの要素の足し算)したモデル作成することで、製薬業界の事情も考慮した予算最適化のモデルを組むことが出来ると思います。


例えば、用意するデータとして以下のデータを用意します。

  • ウェブセミナーの開催コスト

  • セミナー参加人数

  • MRが送付したe-mail1回あたりのコスト

  • MRが面談した1回あたりのコスト

  • MRくんのコスト

    これらのデータを使ってROIカーブやアドストックの条件を入れた予測モデルを作ります。

    そうして作成したモデルの予測値と実際の処方数を重ねたグラフを作成しました。以下のようなグラフです。青が予測値、赤が実測値になります。


この予測モデルからどの要素がどれだけ処方に影響を与えているかモデルを作成することで以下のような形でアウトプットをすることが可能です。

この例では「MR君」の効果が最も高く、次いで「MR面談」の効果が高く、活動としては「e-mail」の効果が最も低いことがわかります。

そして効果の減少傾向もこのような形で出力されます。オンラインミーティングの効果の低下ペースが早い一方、ウェブセミナーは効果の低下が一定のところまで小さいです。


これらのデータを踏まえて処方への影響度の割合と費用の割合をグラフ化し、チャネル別にROI評価を出すことが出来ます。このグラフでは、処方への影響度が高かった「MR君」ですが、費用のシェアも高いためROIとしては一番高いわけではないですね。一番投資対効果が高いのは「MRオンラインミーティング」であることがわかります。

また冒頭申し上げたアドストックの効果についても、各チャネルごとに算出できます。「MR君」は即時的な効果がある一方、「オンライン面談」は、すぐに効果が出なくても長期目線では効果を与えていることが分かります。

処方への影響度・ROI・投資を増やした時の逓減速度・アドストック効果を総合的に考慮し予算を最適化させていくことが出来ます。
※サンプルデータでのモデル作成なので実際の効果とは異なります。

こういったモデルを作成することで、予算最適化の意思決定の一助になります。こういったデータが実際に予算を策定してきた方々の感覚とずれていないかディスカッションをしていき、何度もデータに基づいた意思決定を繰り返すことで精緻な予算策定が可能になります。

また、このモデルでは"地域差"などは考慮できていないので、より詳細の条件を入れてモデルを改善し続ける必要があると思います。

こういった解析にご興味あればseiyakitazume@pi-pon.comもしくはこちらのフォームにてご連絡ください。

https://docs.google.com/forms/d/1RT1AoUMXxHgN2yPzxLMHIKHQFvciziZjfcX6PD3a1Bw/prefill


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