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『ボールペン』ー詩ー

朝は口角をあげて
「おはようございます」
目を合わせる余裕さえない人もいる
餌をもらう金魚と同じ口をしているだけ
いや、金魚だって私の目を見る
誰かが足りない
私の前の席に座っていた
入社三年目で昨日退職した彼だ

朝礼はいつも通り
同じ時間、手帳のスケジュールを
パクパクと言うだけ
いつもより少しだけ早く終わったのは
あの彼がいないからだ

彼がいた机を気に留める人はいない
昨日まで仲間だった彼は
すでに過去の人なのだ
まるで無くしたボールペンと同じだ
直ぐにどうでもよくなる
そう。
代わりなんていくらでもいるのだ

自分を犠牲にしていないだろうか
気持ちはここにあるだろうか
日々のルーティンを
こなしているだけではないだろうか
いくつもあったはずの道
一本にしたのは自分ではなかったのか

使い捨てカイロ
使い捨てマスク
使い捨てのボールペン
使い捨てのワタシ

帰りも口角をあげて
「お先に失礼します」
ポツリ、ポツリ と
返ってくる声を待てずにドアを閉めた
うん。
真っ白な封筒を買って帰ろう

✴︎✴︎✴︎

会社って、社会って
そんなことわかりきった上で書いた
ironyな詩
#詩 #poetry #lyric

書くことはヨチヨチ歩きの🐣です。インプットの為に使わせていただきます❤️