見出し画像

「カーブ」ー詩ー

あのカーブを曲がると見えてくる景色
思わず車の窓を開ける
潮風を顔に当てながら
閉じた瞳には
故郷の家族の笑顔が咲く

季節外れの花を思い出すように
楽しかった日々を摘まみながら
独り言のように呟く

変わらない故郷を前に
変わらない自分を発見する
「ただいま」「お帰り」
何も変わってはいない
あんな自分に こんな自分に
嫌気がさしていたはずなのに
変わってはいなかった

変わったのは
母の視線の高さ
曲がった腰は生活を更に不自由にさせ
お茶碗に盛るご飯の量は半分に
時の流れに心も流され
目尻に桜の花びらのような
雫がこぼれた

人は記憶の中に
生きるようになるのだろうか
アルバムをめくるように
幼い頃の話しを繰り返す母
「私は此処よ」と
通り過ぎる風のように呟いてみた

カーブを曲がりながら
サイドミラーに移る景色
あと何回見ることができるのだろうか

✴︎✴︎✴︎

望星2023年12月号選外佳作頂きました。
マーサ・ナカムラさんの講評に今回もジーンとしてしまいました。
本当にそうなんです。
cofumiのこの詩にはなんの仕掛けもない。いわばアナログ。
今回は、事実が何語かあるのですが、そこからは一枚の絵を仕上げる様に書き足しています。
タイトルのカーブ、そのカーブを過ぎたら海と小さな町が右斜に広がります。
それを目にすると帰ってきたと思うんです。他のどの景色を見てもそんな気持ちにはならないのですが。不思議ですね。
珍しく説明!?してみました🤭

以下は数行程度の講評を画像にてご覧になることができます。

ここから先は

431字 / 1画像

¥ 100

書くことはヨチヨチ歩きの🐣です。インプットの為に使わせていただきます❤️