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不自由で、わかりにくい


私にはやはり、これまでの個人サイトやブログと同様に、noteをやめたいなと思う日がある。「削除」のボタン一つで、私という存在が世界から消えてしまえばいいのに。消えてしまえればきっといいのに。そう思いながら文字を打つ。縋るみたいに。叫ぶみたいに。言葉を刻んで、自分を切り刻んで、頼むよ、もっと心が痛いままでいさせてほしい。すり減って使い物にならなくなるまで私の感性に鑢を掛けて、真っ二つに容易く折れるまで私の悲鳴を鋭くして。そうしていつか辞めたいよ。世界から消えたい。

小説を書くと、昏く鈍磨させて見ないことにした、私の本音を透かしてしまって、そのことが頭から離れなくなる。いつもこうだ。いつだってこうだ。だから書かなきゃいいのにって嗤笑ってしまう。書かなければ、気づかないのに。なぜ書く。書くなよ。痛いよ。痛いんだ。本当は、痛いのなんて嫌なんだから。独りだと思い知るのがつらいんだから。書かなきゃいいのに。なぜ書くんだ、私は。手の甲を包丁で刺して、手のひらまで貫通させて、肉を抉ってボロボロにしたい。指先の神経が全部潰えてしまえばいい。書けないように、書かないようになれよ。なってよ。

エッセイも日記も誤魔化している。きれいな私を夢に描いている。嘘ばっかり、嘘ばっかり、嘘ばっかり。物分かりのいい私なんてどこにもいない。

助けてほしい。
この地獄から救われたい。

そんなふうに、病んだ眸で、私を覗くな。天使なんかいない。



noteの活動で私には一つ目標があって、それは『ハニーレモンソーダ』が完結した暁に3万字の感想文をしたためることなんだけど、たぶんそれを成し遂げるまでやめないと思うんだけど、私というのは昔から、素手で硝子を握りしめて、突然襲いかかる人間なので、急に息ができなくなったらすまん。本当はもっと楽しいことだけ、幸せなことだけ、前向きなことだけ、くだらなくてどうでもいいことだけを書いていられたらいいのにな。なれない。何年経っても、なれないし為せない。noteの住民に同化したい気持ちだけがふわふわと浮ついて、浮かれたぶんだけ、ふっと魔が差す瞬間に、陰影が濃く見えてしまう。

「わかりやすい文章を書こう」という言葉に、いつも反抗心が擡げるのは、本当は誰にもわかられたくなんかないからじゃないかと思う。私は、わかりやすい文章がいいだなんて言いたくない。言いたくないんだ、きっと。そんなものはくそくらえだ。簡単に、一瞬で、たった一度読んだくらいで、わかられてたまるか。わかるはずがないから言葉を尽くしてるんだ。私の裡で、地獄の釜で煮詰まった、ありったけの痛みと悲鳴で書いているんだ。わかられたくない。わかるはずがない。だから叫ぶから、世界を真っ白に染めるように叫ぶから、もっと向こうで、もっと遠くで、もっと未来で、もっともっともっと、もっとずっと先の永遠で、私の言葉が私から自由になった世界で、わかってほしい。こんな澱んだ掃き溜めなんかじゃなくて、あなたの、あなたが澄ませた、清らかな呼吸で。


消えたいよ。世界から消えたい。凍んだ氷の中で、私は花を燃やす。あなたの世界に憧れたまま。あなたの夏のまぶしさに、目を細めたまま。


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