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番外編 トニーと赤木

「な、ななななんでこんなことに?!」

そんな叫びを口にした男の名は赤木。
赤木は赤城村から聖クロッシア病院に行くところだった。
今は木の陰に隠れている。

「う、うさぎ…?に角…?」
「それに、あれは…スライム…?」
「スライム…ってゲームの中にしかいないのでは…?」

赤木はしばらく赤城村から外にでていなかった。
だが、赤城村では事件が起きていた。
村人がご神木を中心に倒れるという事件だった。
解決のため赤城村から出て間もなく。
そこに広がっている景色は今まで見たことの無いものだった。
角が生えたウサギに、ゼリー状のものがうにょうにょと地面を這っている。

「で、でも…村のため…」
「私は村長赤木、村のために進まなければ!」

ザっ…

木の陰から一歩出る。

すると、角が生えたウサギと目が合ってしまった。

「あ」

嫌な予感がした。

角の生えたウサギは予想通り、こちらに向かっていた。
鋭い角は尖っており、どんなものでも貫けそうだ。

「う、うわあああああ!」

赤木が走り出す。
ウサギも追いかける。
あっというまに追い付かれ、突進してくる。

「ひ、ひぃ!」

ふと横を見ると落ちていた空き缶が貫かれたのが分かった。
後ろを振り返る余裕も無いが、命の危機が迫っているのは間違いない。

「もうだめだぁあああああ!!」

「おや、お困りかい?」

何かの声が聞こえた。

声が聞こえた方を見ると、また角が生えたウサギがいた。
だが、先ほどからのウサギとは違い、赤い首輪をしていた。

「も、モンスターが、ふ、増えた?!」
「おやおや、落ち着くでござるよ」

首輪をしたウサギは赤木に並走しながら話しかけてきた。

「ここは拙者に任せてもらえないかい?」
「信用していいんですか?!」
「それは…おまえさん次第だねぇ」

信用するか、しないか。
どうする赤木!

「お願いしまぁああああああああす!!」

「引き受けたでござる!」

首輪のウサギはどこに閉まっていたのか、三角定規を取り出す。
追いかけてきたウサギに投げた。

「今の内に逃げるでござるぅううううう!!」
「結局逃げるんですかぁああああああああ………」




コトナリ辞典
トニカク

角がユニコーンのように生えているウサギ。「とにかく」と鳴くこともある。とにかく早く何かを成し遂げたいと思っており、その辺の通りすがりを襲う。天災以降、雑魚モンスターとして増殖した。尖ったものが好き。

イラスト:あの子さま

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