肉豆腐の謎

家庭内で普通に通用するものが、どうやら世の中とは違うことのようだと、気付く瞬間がある。私はこれがめちゃくちゃ多くて、自分でも『マジか~。これも違うのか~。』と内心思うことがある。あれだ。イギリスで空前のブームのカツカレーと呼ばれているものは、日本ではカレーです。みたいな。それだったら、まだいい方だ。

肉豆腐だ。
完全に違ったやつだ。
うちの母は個人事業主だったのですが、仕事をしながらも、ごはんを作ってくれたのですが、後々それは母が超適当にネーミングを付けた創作料理だったと、私が外で恥をかいて理解するという。。。私は人間に恐怖を懐いていたタイプなので、元々話をしない感じなのですが、ごく数人と話すようになることがあるのです。小学生の時、少ない友だちに
「昨日の夕ごはん、なに食べた?」
「ハンバーグと肉豆腐」
「え?ハンバーグと肉豆腐?すごいね!」
「? すごくないよ?普通だよ」
「普通なの?豪華だよ!」
。。。恐ろしい話だ。今思うと、とんでもないことを言っている。
母の創作料理の肉豆腐は、ひき肉を炒めて、にんじん、玉ねぎ、たまにピーマンを可能な限りみじん切りにして、炒めたひき肉の中に投入して、更に炒めて、その中に木綿豆腐をぶち込み、その木綿豆腐をぐっちゃぐっちゃにしながら、すべてを炒めて、もうなんだかわからないやつだ。ベースは確実に木綿豆腐で、その中に、ひき肉とにんじんと玉ねぎとピーマンが入ったり入らなかったりでオレンジ色の乳白色の液体が淀む謎料理だった。これはひどいぞ。すき焼きが牛肉ではなく豚肉だったというレベルじゃない。だいたい姿が違う。私は肉豆腐とは完全に小鉢だと思っていた。いわば、お通しが肉豆腐だと思っていたのだ。恐ろしいぞ。

私はこの手の間違いがほんとうに多く、すべて両親から伝え聞いていたものが常識はずれだったのだ。大人は正しいという考えが間違っていたのだ。

この肉豆腐が認識していた小鉢料理とは別物で、どちらかというとすき焼きに近いメイン料理だったと知ったのは、

実は近年なのだ。

具体的な年数でいうと、おそらくは去年か一昨年くらいなのだ。なぜ正解の肉豆腐にたどり着けることができたのかというと、ごはんを作った時に父親から
「おまえみたいなド素人が割り下作っても、たかがしれてる。メーカーの使え。メーカーは研究してるから、おまえがかなうはずがない」
ということを言われたのだが、なぜ父親がそんなことを言ったのかというと、テレビでエバラ焼肉のたれを創るために、メーカーの社員さんが世界中を飛び回り甘酸っぱい味の答えが実は日本の梅にあったというような内容を観て、「おまえがメーカーにかなうはずがない」と言ったのだ。それは正解だ。

それで割り下を求めて、いろいろなメーカーの割り下を買ったのだが、こちらも予算があり、高級な割り下は買えない。安い割り下の中で、うちの舌に合う味がエバラさんだったのだが、エバラさんはラベルの裏側に料理の提案をプリントしてくれているのだが、肉じゃがとかだと気が付かないのだが、ある時、エバラすき焼きのたれを買って、裏側を読んでいると
肉豆腐のレシピが写真付きで書いて合った。。。

あれは、衝撃的な出来事としか言いようがない。

肉豆腐って、だいたいすき焼きじゃん!ということを理解してから、すき焼きを出すのをやめて

肉豆腐ばかり、食卓に出している。。。

エバラさん、ありがとうございました。
いろいろ助かりました。

追記
あの謎の肉豆腐と家庭内で呼ばれていたものは、もしかすると炒り豆腐だったのかな?とレシピを見てみましたが、卵は入っていないし、木綿豆腐の水切りもしていなかったので

完全に母の創作料理だということがわかりました。

想像ですが、頭では炒り豆腐を作っていたのだと思います。ですが、卵が抜けていて、『これは肉と豆腐が入っているから、肉豆腐である』となったのか、

或いは、食費を抑えるために卵を材料からカットしたか、

どちらかだと思いますが、おそらくは炒り豆腐の不正解だと思います。

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