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【前編】SPACEをPLACEにするには?〜プレイスメイキング〜【まちのことを話そう】【まちづくりQ&A】

はじめに🌲

株式会社花咲爺さんズの石井です。この記事は2020年6月15日に開催された花咲爺さんズ初主催のまちづくりイベント「まちのことを話そう〜よいまちとはなにか?〜」内で答えられなかったQ&Aをまとめたものです。参加してくださった方はもちろん、まちづくりに興味がある方たちの参考になれば幸いです。

イベントレポートは絶賛編集中ですので、もう少しお待ちください!(遅くなって、ごめんなさい!)
株式会社花咲爺さんズについては、こちらの記事をお読みください。
🌸まちづくり企業「花咲爺さんズ」が考えること〜まちづくりで、世界を変える〜

第一回目のテーマとゲストは?

記念すべき第一回目のテーマは、「多様化する「まちづくり」の形〜世界の「プレイスメイキング」と「エリアマネジメント」から考える〜」でした。ゲストにお迎えしたのは、株式会社クオル・ソトノバ の田村康一郎氏。イベントで参加者の方にいただいたご質問を、大きく2つにしてご回答をいただきました。前編・後編に分けて、たっぷりじっくりお届けします!

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田村康一郎氏/ソトノバ /株式会社クオル

東京大学工学部社会基盤学科、同大学院国際協力学専攻を卒業後、コンサルタントとして開発途上国における交通・都市計画の策定や技術協力に従事。アフリカ、アジア、中東と20カ国以上でプロジェクトを遂行する。次第にパブリックスペース・オープンスペースから都市と生活に変化をもたらすことに関心を持つようになり、ニューヨークのPratt Institute大学院でプレイスメイキングについて研究・実践を行う。
その後、フリーランス業務を行いながら、地域プロジェクトやパブリックスペースに関する普及啓発に取り組む。日本における都市のオープンスペースの活用とマネジメントの可能性を拡げるべく、コンサルタントとしてクオルへ入社。東京と奈良の二拠点で活動する。

SPACEをPLACEにするためには?

それでは、さっそく本題に入りましょう。弊社代表の加藤がガイドとして、いただいた質問をまとめました!

イベントでは、田村さんにプレイスメイキングの考え方である空間として存在する場所(SPACE)を使う中で居心地が良いと感じてもらい、多様な人の居場所(PLACE)にしていくという場所の育て方の方向性を示してもらいました。それに関して参加者の皆さんから頂いた質問はこんな感じ。

●SPACE→PLACEになる際の特別な意味ってどんなものがあるのでしょうか?思い出とかの個人的なものですかね?
●spaceからplaceに変わったかは、「人が定期的に集まるかどうか」が一つの基準?になるような気がするのですが、人が集まりにくい今は、どういったポイントでplaceを作っていけばいいのか気になります。
●アクティビティ調査で収集したデータの読み方や、その後の設計・運営への具体的な反映のさせ方について、意識されているポイントがあれば聞いてみたいです。
●紹介いただいた事例のように、人がどこで過ごしていたか動線やカウントの分析は数値ででるので説得力が高まると思います。そういった解析はどのように行っていますか?専門の機材やソフトを導入しているのでしょうか?

これらを3つに整理してみました。

(1)SPACE→PLACE化の目安はどういったものですか?
(2)それを分析・指標化できますか?
(3)実際のまちづくり活動にどう反映していけばよいでしょうか?

どれも実践をする中で出てきそうな疑問ですね。
田村さんには事例などを交えて答えてもらいました。それでは始めましょう!

(1)SPACE→PLACE化の目安はどういったものですか?

田村さん:
PLACEの在りようの分かりやすい形として、アクティビティの多様さが挙げられます。これは、単に人数がいる、というのとは意味が違います。
ぼーっと佇んでいる人もいれば、会話をしている人、食事をしている人、あるいは遊んでいる人や仕事をしている人もいるといったように、様々な活動が立ち現れているということが、ひとつのポイントです。

これは、利用者属性の多様さという面にもつながります。インクルーシブさ、あるいは非排除的であると感じられるか?という点も要素になるかと思います。もちろん、小さな場所の場合は全てを受け止めることが難しいので、複数の小さな異なる点が集まることで、一定範囲のエリアとして多様なアクティビティが集まるPLACEを形づくることができます。

個人個人の感情や体験、あるいは「愛着」といったものも、PLACEの大切な要素です。これはなかなか目で見ることは難しいところかもしれません。ただ、場をよく観察してみると、そこに深いコミットをしている人がいるかもしれません。

自ら手入れや運営に関わるという形もあれば、いつもそこに来ていたり、私物を持ってきて自分の家のように使いこなしたり。そのような場への思い入れが見られる行動は、その人らにとってPLACEとして扱われていると見ることができるでしょう。

(2)それを分析・指標化できますか?

田村さん:
アクティビティ調査については、ゲール事務所がツールの開発を行っており、調査シートを公開(英語)しています。非常にシンプルなものですが、パブリックスペースで人がどのような使い方をしているのか、定量的かつ空間的に把握できるものです。

日本語でも書籍『パブリックライフ学入門』でまとめられているので、参考になると思います。このゲール事務所も、 近年はアプリを使ったアクティビティ調査の開発を行っており、デジタルツールの活用も大きなトピックとして、技術が進歩している領域になります。

たとえば、スペースシンタックスのような会社がこの分野でサービスを提供しています。人の行動ではなく空間の特性に目を向けたデータとしては、State of PlaceやNeighbourlyticsといった海外ベンチャ ーが、ビッグデータを用いた指標化に取り組んでいます。

こういった定量データの活用は非常に強力でトレンドでもありますが、人の目で観察することにも大きな意味があります。データだけでは見えない、感覚的な部分重要になるからです。たとえば、プレイスメイキングの概念を提唱し、 普及している団体であるProject for Public Spacesは、PLACEらしさを特徴づける要素をダイアグラム に整理 しています。その評価項 目を用いた「プレイスゲーム」という調査分析ツールも開発しています。

(3)実際のまちづくり活動にどう反映していけばよいでしょうか?

田村さん:
場所の特性と行動の分析は、空間のデザインまたは(一時的な )演出、イ ベントなどのプログラムを考える際に役立てることができます。
現状で分かったことに対して、どういう使い方や使い手が増えるといいのかを考え、それを実現する工夫をしていきます。

たとえば、アクティビティの現状を見て、人が通過するばかりの場所をもっと滞在できる場所にしたいとしたら、座る場所を増やすのが一つの手かと思います。そこで調べた人の動線からどこに配置すればいいか、あるいは場所の感覚的な使いやすさ/使いにくさの観察から気持ちよく座れるにはどういった配置にしたらいいかを考え、場のしつらえに反映することができます。

日差しや目線、座具のタイプ(動かせるか否か、 座れる姿勢 など )、あるいは座るきっかけになるもの(たとえば飲食)といった様々な面から、場所の居心地のよさに照らし合わせて工夫ができるはずです。よいと思える他の場所の使い方を観察すると参考にできることもあります。

何かプログラムを企画する際にも、空間の配置 ・演出だけでなく、対象や内容を考えるために、調査して得られた情報を生かすことができます。その活動によって場の特長を高められるか、使い方や利用者層を広げられるか、あるいは他のアクティビティを阻害しないか、などの面から検討ができるでしょう。

まとめ🌿

田村さんの回答をみて、SPACEをPLACEにするために必要な流れをまとめてみました。

①アクティビティを観察する。
②「多様性」と「愛着」に着目をする。
③調査を踏まえ、どういう「使い方」「使い手」が増えるとよいかを考えて、イベントなどのプログラムに落とす。
④居場所と感じる人が増えて、SpaceからPlaceに変化していく流れを作ることができる。

ということでしょうか。観察 (アクティビティ調査)のノウハウをまとめた本や使えるツールも公開されているので参考にすることができるし、アクティビティではなく空間の特性に目を向けたビックデータ分析も最近のトレンドとしてあるということも学べました。是非みなさんも実践してみてください!

後編は「小さなアクションをどう広げていくか?」について、お話をしたいと思います!お楽しみに〜〜。



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