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私的エゴとの付き合い方♡

海辺をさんぽしていると、いろんな人に会う。

とくに犬を連れている人ってのはとても多くて、湘南という土地柄なのか、平日の昼間でもかなりの高確率で、働き盛りっぽいおじさんが、テロンテロンのTシャツ短パンにビーサン姿で、犬の綱を引っ張ってたりする。サラリーマン時代、会社をサボると罪悪感で一歩も外に出れなかった昔の私に見せてあげたいこの光景。誰一人あくせく働く気がない(いや、実際は知らんけど、とりあえずそう見える)。湘南の、とりわけ海辺の時間は南の島かと見まがうほどのんびり流れている。

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わたしはそんな、平日昼間犬散歩という謎のオジサンたちを観察するのがシュミなのだけど、まあ大体のおじさんは、犬の綱をそこそこピンと張って、自分の行きたい方に誘導している。犬が砂を掘ったり、ほかの犬の肛門を嗅いだりすると、適当なタイミングでツンツンと引っ張って軌道修正する。まあ当たり前だ。ずーっと付き合ってたらたぶん夜まで家に帰れないし。

でもある日出会ったジャックラッセルテリアとその飼い主はどこか違っていた。

40代半ば。サーフブランドのTシャツに短パン、ビルケンのサンダル。薄い顎髭ののんびりした雰囲気。ギラギラでも無気力でもない麻のハンカチのような男性と、哲学的な瞳で海を見つめる犬。

男性はどこまでも犬のペースに忠実だ。犬が立ち止まれば一緒に止まる。フンフンと歩き出せば、綱をたるませながらのんびりついていく。犬がふと座れば、飼い主も隣に座り一緒にぼーっと海を眺める。

なんだかどこにも力みがないのだ。犬も飼い主も。お互い空気のように、ただそこにいる。自分のペースで動いているが、不思議とかち合うことはない。でもどこかお互いの呼吸を感じ取ってもいる。そして綱は、常に少しだけたるんでいる。

犬が海を眺め終わるまで5分、10分くらいあったんじゃないだろうか?その間、飼い主も海岸の段差に座り、何をするでもなく犬の視線の先をぼーっと眺めていた(そんな二人をわたしもぼーっと眺めていたワケだがw)

ふと、犬が「さ、いこか」という風情で立ち上がると、男性も服の砂を払って立ち上がり、のんびりのんびり来た方向へ帰っていった。(さらに遠くまで見送っていると、ほかの犬に吠えつかれ、最後はセカンドバックみたいに小脇に抱えて撤収されていたがww)

実際には「犬の散歩でもいってきてよ!」と妻にどやされ、スマホを握るヒマもなく家を追い出されだけなのかも知れない。二日酔いで能動的に歩く意欲がないだけなのかも知れない。

でもわたしには、2人(1人と1匹)のペースがとても気持ちよかった。ストンと肩の力が抜けるような。気取らない店で美味しい定食を食べているような、そんな心地(どんなじゃ)。

そしてなんとなく思った。

あの男性は、自分の感情とも、とても適正な距離を持って付き合える人なんじゃないだろうか?と。綱をビンビンに引いてコントロールするわけでもなく、かと言って完全に手綱を離してしまうわけでもなく。目の端では捉えておきながらも、手綱はゆるゆるに余白を残しておく。自由な動きを制限しない。

走りたければはしればいいし、海を眺めたければ好きなだけ眺めればいい。特に急ぐわけでもない、のんびり付き合うよ、というスタンス。(知らんけど)

そしてわたしも、わたし自身とそんな距離感で付き合えたらいいな、と思いながらその日は帰路についた。

気がつくと腕がかなり日に焼けていた。





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