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ホップの気づいた事まとめ2023

はじめに。
これは私が2023年にホップを育てたり、畑を見学したり、苗を買ってくれた方からご報告を受けたりして、私が感じた事、新たに知った事などを記載しています。
因みに全く学術的根拠とかはありません。殆どが何となくぼんやりです。私の頭の中をぶちまけ、整理する備忘録の様な感じです。
いやそこの話は、こう思うよ、違うよ、という部分があったらコメント欄にお寄せください。


■ホップの育ち方

ホップの育ち方に古い、新しいという感じ方があると、ホップ農家さんのお話を聴いて知った。
私が感じた形を言語化すると

・新しいホップ
節間が短く、側枝も大きくは伸びない。ムラカミセブンを始めとした、株元から毬花が付くタイプや、ヴィスタやカシミア、トライアンフ等の新しい品種等の近年育種された品種の株姿の雰囲気。

・古いホップ
節間が広く、側枝も大きく伸びる。株全体の上部3分の2に毬花が付く従来の品種。信州早生やそれから派生したキリン2号、かいこがね、またザーツやハラタウ、ソラチエース等、昔からある品種の中でも特に古くから活躍する品種の株姿の雰囲気。

とはいえ、ニュージーランドで育種されたホップは節間が長く側枝も伸びると聞くし、新たに育種した品種でも勿論、そういった特徴を持つホップはある。農家さんの高齢化を鑑みて、ツル下げや側枝の剪定等の作業軽減の為に、そういった方向性のホップが近年は好まれて選抜されている、といった傾向が、成長する姿にそういった印象を与えている様だ。

■信州早生はとにかくすごかったし、それの影響が今後あるかもしれない

田子町の農家さんは、以前まで信州早生の生産のみを行っていた様だった。私の作業場がある紫波町佐比内地域も生産していた品種は信州早生。遠野で栽培されている中にはキリン2号があるが、これも信州早生の選抜だ。
農家さんの育て方を聞いていると、とにかく株拵えは徹底している。親の仇の様に新芽を刈る。とにかく刈る。紫波の農家さんの刈る姿は、語弊があるかもしれないが、恨みすらあるのではないか、と言う位の姿だった。

まあ、個人のホップへの思いはさておき、それだけ芽を刈らねばならなかったのだ。理由は、生育が旺盛だから。
地中にある芽の集合体(海外ではクラウンと言うらしいので以後クラウンで統一)の形成が早いのか良く出来るのかは分からないが、そのクラウンの育ちが良い品種の様で、その生育旺盛さが、紫波町佐比内の様な山間部、遠野の様な盆地、田子町の様な野菜栽培に向かない土、盛岡玉山の様な冬期が極端に寒すぎる、等の様々な悪条件を乗り越えてくれた様だ。
生育旺盛さというのは、病害虫抵抗にも繋がる。ある程度の生育の勢いがある植物は、大体の病害虫を無視できる強さがあるのだ。そういった面でも信州早生は、悪条件の地域で活躍してくれた、と言った背景がある…気がした(詳しくは調べたわけではないので

だが、その生育旺盛さは、手に負えない程の側枝やら、クラウンがめっちゃ形成されてシュートやらが伸びる事にもなるので、側枝の剪定やツル下げ等の作業が出てくる事に繋がるし、とにかく毎日見てないと何をしでかし始めるか分からない。まるでやんちゃ盛りの小学生男子を常に見張る、といった様相になってしまう。
生育旺盛は様々な悪条件の地域に光を差したが、その反面、様々な野菜の品目からすると、手がかかる品目ともなってしまうので、ホップ栽培自体の敬遠の遠因にもなってしまったのかなと思う。

ただ、このやんちゃな信州早生は、まだ影響を与えている様で、やんちゃ男子への対応と、物静かな女子への対応は同じくしない様に、元気すぎる信州早生の管理と、現在出ている様々な新しい品種や弊店で導入している海外の品種との管理は大きく違う様だ。
田子町の農家さんが仰っていたが、信州早生の株拵えを他の品種でやると、中にはダメージになってしまう品種もある、との話だった。かくいう私も、育て方を教わったのは信州早生を育てていた元農家さんなので、このサイトに書いている育て方も、やはり信州早生を基本とした育て方だ。勿論、現役のホップ農家さんも、それに関わるノウハウも基本は信州早生が元となっている。全てが当てはまらない、という訳ではないので、そのままで十分他の品種も育てる事は可能だが、ここら辺は色々と育てながら、また株を購入いただいた方々にもお話を伺いながら、色々と変えていきたいなと思っている。

■田子町の農家さん方式は楽

青森県田子町の農家さんの畑は、支柱が7m。
リトルスターという株元から毬花が付く品種、信州早生やソラチエース等も育てている。
それら全て、ツル下げをしていないそうだ。

リトルスターは、そこまで大きく伸びないのでそもそもツル下げを必要としない品種なので分かるが、信州早生等の従来品種の様な旺盛に伸びる品種もツル下げをしていないとの話だった。なので、雑草処理と薬剤噴霧、たまに支柱から外れたツルを戻す作業位しかやっていないとの話だった。
ニンニクなどの他の野菜栽培も手掛けているので、ツル下げとかやってらんない、という理由みたいだが、収量も問題ない様なので、不思議だった。(それでも昔はツル下げも側枝の剪定も全部やってたよ、とは言っていた。どこでツル下げしないマンに変更になったのか気になるところ)

■毬花がつく側枝の伸び方

海外で育種された品種の側枝の伸び方を見ると、大きく2種類に分かれる

・側枝が伸び、その脇芽に花芽が付く

脇芽の長さは品種による

信州早生やソラチエース等の日本の古来の品種を始めとして、ムラカミセブン等の新しい品種、海外の品種でもカスケード等はこういった側枝の伸び方、花の咲き方をする

・側枝が伸びず直接花芽が付く

良くて数個、概ね節に2つのみ

センテニアル、ヘルスブッカー、テトナンガー、ハラタウ等がこういう傾向があるのと、概ね海外の品種にこういった傾向が出ている様だった。
また日本の品種でも、節の位置によってもこういった咲き方はするし、比較的若い株、鉢植えなどでもこういった傾向が出てくる様子。

節に直接花芽が付くのは収量に直接関係してくるので、出来れば側枝が伸びる形の方が、生産としては好ましい。
直接花芽の形を表している品種が海外でもそういった傾向があるかは分からないが、恐らくは、海外では側枝が伸びる形の育ち方をしているのではないかと思う。(でないと営利生産に向かないので)

では、何故直接花芽の形になってしまっているか、なのだが、
・株が充実していない
・気温と日照の関係
・水分の充足(憶測)
の上記2つと最後の憶測1つが考えられるのではないかと思う。
株が充実していない、という理由は、農家さんにも言われた事で、植えて1年目の株や鉢植えの株にその傾向が出ている通り、株が充実していないので、側枝を伸ばすまでに至れないので、直接花芽となっているパターン。
気温と日照の関係は、農家さんが春先の気温で開花が前後する事があると仰っていた事と、ホップ関係の文献に「ヨーロッパ種を日本で育てると日照の関係で開花が狂い営利生産に向かない」といった記載があった事から推察した原因。
前者の原因であれば、株を元気に育てれば、いずれ解決するが、後者の原因はどうにもならない。

農家さんに、直接花芽が付くタイプの収量を上げる対処方を伺ったところ、ツルの本数を多くすればいい、とのアドバイスを頂いた。
本来、ツルは1株から3本ぐらい伸ばす様だが、何らかの原因で、株が枯れてしまい空きが出てしまった、隣の株のツルを余計に伸ばして補完するという形を取る事があるそうだ。
本来伸ばすべきツルの本数を3本だとすると、隣の株を6本選抜し、うち3本を枯れてしまった場所の紐に誘引するという形だ。
この方式を直接花芽が付くタイプに利用すれば、ツルの本数が多くなる為、毬花の数も多くなるという寸法だ。
因みに、こういったツルの数を増やしてしまうのは株に負担がないのか、と伺ったら、遠野の農家さんは1株から最大で15本まで伸ばしたのを見た事があると仰ってたし、田子町の農家さんは普段から6本(1つの紐に2ツルずつを3紐)、畑の中には20本近く伸びている株もあったが、なんら問題はないそうだ。
恐らくは、より多くの肥料分が必要だったり、毬花が小さくなったり、株自体の寿命にも関わりそうではあるが、本格的な営利生産をする訳ではないのであれば、このツルの数を増やすという対処方は、節に直接花芽が付く品種の収量アップには向きそうだ。

最後に原因の一つとして考えた憶測が、水分の充足。
これを2つの原因と分けたのは、私の育てている環境のみで見れた状況なので、憶測とした。
鉢植えで育てる場合、日陰にした方が生育が良く、開花もしやすい。そういった環境の鉢植えで育てたセンテニアルが、脇芽を伸ばし毬花をつけてくれた。畑で育てているセンテニアルは節に直接毬花がなる形であるが、日陰で育てたセンテニアルは脇芽を伸ばしてくれた。
畑と鉢植えでの環境の違いは日照時間の長短。日が当たらないと当然水分量も蒸散しにくい為、株の水分量が充足した状態が、畑の株よりも多く続いたのではないかと思った次第。
勿論、日陰という理由での畑との条件違いは他にもあり、日長の差違、また春先の気温が低い等がある。ただ、岩手以外でも日陰で育てた鉢植えが元気に毬花を成らせた様な話を聞く限り、気温や日長には関係ない所なのかなと思い、水分量の充足具合の憶測に至った。
これは、まだはっきりとした原因だと分かった訳ではないので、色々と育ててみて今後調べていきたいと思う。

■側枝カットとその意味

実は、側枝を切るという意味をちゃんと理解していなかったのでここで覚書。

画伯登場

真っ直ぐ伸びるメインのツルを「主幹」、対にある葉の部分を「節」、その節から出る細い枝が「側枝」。
側枝は、節の元からしか出ないという事をまず基本に。
そして、この側枝剪定は、花芽が付くであろう場所、大半の品種は概ね2mより先に出てくる部分に対し効果がある事、そして、節に直接花芽が付くタイプには効果が無いと思われる、という事を前提。

側枝が伸び、元から2節になる前に剪定を行う。剪定を行う事で、側枝の1節目からまた側枝が伸びる。剪定されたことで、二股になる。
この側枝剪定の効果は、剪定により、枝が倍になる事で、収量も倍になる、という寸法。
農家さんの中には、図の先の2股を更に剪定して4股にする方も居るそうだし、逆にあえて切らないで、数量は減るものの、ひとつの毬花を大きくする方向性にする方も居るそうだ。

切るだけで2倍になるんなら、やった方がいいじゃんと思うかもしれないが、如何せん、その切るべき側枝が株ごとに、そして同じ株でも主幹の節ごとに伸びるタイミングが違うので、作業とするととても面倒くさい。しかも切る相手は数メートル上にあるというオマケ付き。
まあ趣味でやる程度であれば、切らないでも生育には問題ないので、覚えなくてもいいかもしれない。

■昭和50年位のニュージーランドホップ圃場研修の様子を読んで

岩手県のホップ農家組合で、昭和の時代にニュージーランドへ研修旅行へ行ったようだ。
以下内容羅列。
・1戸当たり数ヘクタールの圃場
・株の更新は10年毎
・雨が少ないので3~4日毎に潅水を生育期2か月間
・地際から毬花がなる品種の様で、ツル下げをしていない
・病害虫が無いし出ないので無防除
・なんなら株拵えもしないし、誘引も、肥料もやらない
・除草は放し飼いの羊任せ
・買取金額は当時の日本の半額以下
・品種はスーパーアルファ、ステッフルブラック

当時、機械化等による作業の効率化を進めていた岩手のホップ農家さんからすると相当衝撃だった様だ。まあそうだよねえ……。
田子町のホップ農家さん圃場に行った時に羊が居たけど、ニュージーランドに倣ったのかな。それと、株更新が10年毎ってのも新しい情報だった。紫波のホップ農家さんは一切更新なかった様で30年超の株があったし。

■農業研究センター岩舘さんの話を伺って

〇病気の基本と対策

べと病とうどん粉病は植物についている菌、灰色かび病はそこら辺に居る菌と伺った。なので、べとうどん粉は植物そのものへの対処、株にしっかり薬剤散布と残渣の処理、除草が基本。灰色かび病は発生時期を見極めての防除が基本。

〇アズキノメイガの対策

積算温度で春の成虫活動期が分かるそうで、テルスター水和剤の散布時期はその活動期に合わせた散布時期。パダンはそれを対処出来なかった時の殺虫剤といった意味合い。

〇棚の低さは問題があるか

4mぐらいの直管パイプで生育させた場合、特に問題は無いが、ツルが折り重なった所が病害虫の巣になりやすい。棚の頂点に行くまでにしっかりとした薬剤散布を行えるかが肝。それが難しい場合は、こまめなツル下げが必要。

〇病害虫の残りは醸造に問題を生じるか

ルプリンを必要要素とすれば問題ないのではとの見解。(醸造の専門ではない前提)どちらかというと、薬剤の残効の方が影響があると聞いたとのお話。

サポートは紹介した植物の苗の生産維持拡充、記事の充実に利用いたします。どうぞよろしくお願いいたします。