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ホップの事2024年

ここでは2024年にホップの事の備忘録です。誰かの役に立つかもしれないし、立たないかもしれません。


●横手のホップ農家さんの所に見学に行って、秋田のホップの歴史を調べた

画像は横手市大雄地区の役場にある食事処。キリンビールは売っているけど、ホップにまつわるメニューはなかった。産直にはホップ茶があるみたいだけど、日曜休み苦笑

秋田のクラフトビールの雄、ホップドッグブリューイングの長谷川さんに繋げて頂き、横手のホップ農家さんに見学させていただきました。
この横手のホップ農家さんは、弊店からホップ苗をほぼ全品種ご購入頂いている縁もあり、ガチ農家さんが育てると海外種はどの様な感じになるのか見たいという事もあり、ワクワクで行ってきました。

ホップ畑近くの様子。果てしなく水田が続く平地。風が通り抜けるし土は結構乾いていた気がする。あぜ道を車で走ると土煙があがった。岩手ではあまり見ない光景だったかも。

肝心の生育の様子は、概ねアメリカ種は好調で、一部ヨーロッパ種がやはり緩慢の様子ながらも育っている様だった。ただ、それぞれ極早生として扱う必要があるのと、株拵えのタイミングや塩梅も違いがある事、具体的には、株拵えは秋で、芽欠きや土寄せ等の春の作業をやや遅らせ気味にすると予後が良く(またそれは近年の新しい品種もその傾向があるとの事)、猛暑にも対応出来たとの事だった。
またカシミアという品種は花の付き方が柔らかく(どうも花茎が細く柔軟性があるという事みたいです)、平地に畑がある横手では風に吹かれて揺れてしまい、毬花まで至るのが少ないとの事でした。
実は岩手の遠野の方もカシミアを育てており、カシミアは物凄く毬花がなったというお話を伺っていたのです。遠野は山間にある盆地で、畑も山間部にある場合が多いです。なので平地程強風にあおられる事が少ない為、カシミア本来の毬花の付き方が見れた、という事なのかなと思いました。実に面白い。
また、品種によって毬花のサイズが違う為、選果機を使う時に、品種に合わせたサイズ調整に時間がかかるという問題点もある様で、ここら辺もある程度の規模の栽培、しかも単一品種を長年育てて来た事に合わせた機械しか現状無いという難しさを感じました。
海外種を私の所から買ってくれる方は、手作業で収穫、選果する方が殆どだけど、ある一定の規模になると炎天下でもくもくとやる辛さを良くお話されるので、小規模でも選果出来る機械が出来ると良いんだけどねえ。

醸造からの観点も色々とお話をお伺いすることが出来、まずは収量を確保する事、収量を確保出来たらペレット化するまで持って行ってくれると醸造としても使いやすいと。
なかなか難しいお題ではあるものの、農業団体や個人レベルで徐々に規模が大きくなってきている圃場もあるので、ここら辺がこれから先の問題なのだろうなと。
横手の農家さんもホップドッグブリューイングの長谷川さんも色々な問題を抱えつつも、前向きに色々と試行錯誤されていて大変刺激を受けました。ありがとうございます。また行きます。

秋田県立図書館で秋田のホップの歴史を調べる


秋田の図書館は初めて入った

その土地の歴史はその土地の図書館でという事で、横手市立図書館に行く気でいたら、何とリニューアル工事中で休館。勿論大雄地区図書室も休み。
という事で少し車を走らせて秋田県立図書館まで行ってきました。ここ数年やりたかったことの一つなので大変ウキウキ。

ネットで調べてホップ関連の蔵書はなさそうだったんだけど、大体直接行くと表に出てない蔵書が検索に引っかかる事があるのでダメ元で図書館の検索システムで調べると、案の定、秋田県農政部による「ホップの歩み20年史」なるモノを発見したので、読んだ感想を羅列。

秋田のホップの始まりは昭和20年頃。当時の宝酒造のビール部門向けに栽培をスタートするものの、宝酒造のビール取りやめによるキャンセル、そしてサントリーと交渉しokをもらうもののこれもキャンセル、紆余曲折あってキリンで受け入れてもらい、現在に至るとい波乱万丈のスタート。しかも昭和42年には一度栽培が潰えて46年に復活するなど栽培自体も紆余曲折があった様だ。
そもそも現在の大雄地区は昔から寒く雪が春先まで残る事から、他の地域の稲作のスタートよりも遅れてスタートとなってしまう地区だった様で、同じ条件で野菜もダメ、寒さに強く収益性が見込めるホップに、というのがたどり着いた経緯の様だ。ただ、稲作が盛んな秋田で、稲作以外の作物、それも新規品目となると風当たりが強かった様で、当時の苦労が少ないながら記載されていた。
秋田県農政部による記載は他の地域(遠野と盛岡にある岩手県ホップ年史、青森田子にある青森ホップ年史)とは違い、データ量が多くとそれに伴うコメントがかかれているのが特徴的だった。

・〇〇年は長雨だったものの豊作
・8月中旬~下旬は干ばつだったがその分生育が遅れ9月に長雨があり過去最大の豊作
・生育初期に高温で早咲きが起こり予後が悪く落花が起き、日照不足による病気の多発により大幅減収
・冷夏で生育が懸念されたが被害は殆ど無かった
・梅雨以降猛暑と干ばつだったが何故か最高収量だった
※育てていたのはふくゆたかととよみどりだったようですが、途中で品種変更があったみたい。

こういったデータと一言コメントが年史の結構な部分を占めているうえに、別の冊子にはホップと他の作物との兼業による作業効率(稲作、ピーマンなどがあった)の実データ(大雄村の実際の農家さんを数人記録していた)と共に、良い点と改善点が分析されていて、かつ損益分岐点に基づくこれからの収量目標が細かに記載されていてかなり驚いた。
実データに基づく収量目標の冊子は、うろ覚えだけど昭和50年代とかその辺りの古い書き口の内容だったのだが、損益計算に人件費、それも家族労働が人件費としてしっかりと計上されていて、家族労働は人件費としてみなされてなかった辺りの時代に随分と本気な試みを行っていたのだなあと感心した。

収量データと一言コメントは、ホップの生育における癖みたいなものが見えて来て、要は水不足が起きない方がいい、というのがよく分かった。
2023年は猛暑で横手も遠野もホップの産地は皆苦労したと聞く。海外もチェコやアメリカも苦戦とかどうとか。やはり水を沢山飲みたい植物なのだなあと改めて感じた次第。

数時間だけの滞在で流し読みをしたのだけど、また後でゆっくりと読みに行こうと思う。

サポートは紹介した植物の苗の生産維持拡充、記事の充実に利用いたします。どうぞよろしくお願いいたします。