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待つ、という仕事

オペラ公演やミュージカルなど音楽劇の舞台が好きで良く観劇に行く方や、音楽家の方ならきっとすぐにピンと来るお話です

音楽劇の公演は大抵2〜4時間程の長さがあります。
が、たった1人の歌手が
歌い演じ続ける作品はほぼ有りません。
何人ものソリスト、そして合唱団、エキストラの役者が出演しますが、
私達は舞台に上がったり下がったりします。

例えば、有名なモーツアルトのオペラ
「魔笛」では
女声合唱の出番は3回
男性合唱の出番は6回

魔笛は3時間程の長さがあるので
言ってしまえば
待ち時間の方が断然長い。

一体この時間帯、舞台裏で何が起きているのでしょうか?

暴露してしまいます...

今朝 偶然スマホに入って来たメッセージでは、男声合唱団に

「今夜の公演でお前らに美味いものを食わせてやるぜ」

!!!
こんな羨ましいお誘いが

舞台上で夜の女王が
あの有名な超絶技巧のコロラトウーラアリアを
これでもかーっという怖い形相で歌っておられる時間帯に

男声合唱団員は
料理の腕が素晴らしい私と音大同期だった
バリトン某君に
餌付けされています...
そんな幸せに浸っている彼らの楽屋と離れている
女声合唱団員楽屋、
メンバーが集う
”みんなの部屋“ では
それぞれが出身地の美味しいお料理を作って来てくれたり、ケーキなどを焼いて来てくれたり、
もうそれは毎晩のように危険なほどの誘惑が
襲って来ています。

入りたての頃は
よく先輩方は
「ここに入ったら後が大変なのよ!」

と口を揃えていっていましたが、
最近その意味がわかって来ました。

太ります...

だから美味しいもの達がたくさんあっても
微妙なお年頃の団員さんは
あえて皆の集う
“部屋”
には入室しない場合もあり、
そんな時は

楽屋の
自分の場所で
次の出番の譜読みをしたり
お喋り、育児相談、編み物(私はしません)、読書、
スマホ、語学勉強、
などなどで時間を過ごしています。

もっと公演作品に集中しなくちゃ、
こんなことしていたら
次の出番の雰囲気作りができないのでは?!
と、はじめはかなり皆さんのおふざけな姿勢に戸惑いました。
が、
舞台上での先輩方は切り替えが素晴らしすぎました

あんなに楽屋でぎゃーぎゃーと大騒ぎしていたあの姿を微塵も感じさせない素晴らしい演技に、
取り替えたような澄んだ声!!

はじめは私も愕然としていました
が、
毎日の事に、私もすっかり
この”部屋“の利用頻度のコントロールも
熟練し、

長い待ち時間を過ごす術をしっかりと
身につけ(楽しむ)事が出来るようになりました♪

今日も待っています






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