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おじさまと車

私はスポーツの類をまったくやっていない。
足が速そうだとかヨガをやっていそうだとか言われることがあるが、時間ギリギリのバスに間に合ったためしも無いし、身体もかたい。


そんな私なので、運転免許証を取ろうなどと大それたことは一切考えなかった。
今は無きディズニーランドのグランドサーキット・レースウェイとか大好きだったが、現実の世界というのは縦列駐車なのであり、車線変更なのであり、首都高なのである。
できる気がしない。
安全なレールの上を走るのとはわけが違うのだ。


今まで好きになったおじさまも車の運転をしない人が多かった。
はなから免許を取らなかったというおじさまもいれば、仕事が忙し過ぎて免許の更新に赴けず失効するにまかせたというおじさまもいれば、お抱えの運転手さんがいるおじさまもいたが、基本、みんな移動手段は電車かタクシー。
デートの時はほぼタクシー。


でも。
私としては、おじさんが車を運転している姿ってカッコよくて大好きだ。
まれに「車で迎えに行くよ」などと言われると心に花とハートマークが咲き乱れる。
待ち合わせ場所におじさまのイメージ通りの落ち着いたセダンが現れたりした日にはもう、内心大はしゃぎである。


*おじさまの運転におけるときめきポイント*

◆バックする時の仕草がカッコいい
ハンドル操作をしながら助手席に手を置いて後ろを見るのもいいし、運転席側の窓から顔を出して後ろを見るのもいい。
モニターの中の枠を見ながら駐車する何とかいうシステムができた時は「へ〜すごい!」とは思いつつも、楽しみを奪われた感があった。

◆くわえ煙草で運転する姿がカッコいい
エンジンを掛けながら胸ポケットの煙草を取り出して1本くわえ‥‥
‥‥ん?待って。
煙草を吸うおじさまは運転しなかったり、あるいはその逆だったりして、よくよく思い返すと両立する人は一人もいなかった。
でも想像するだにカッコいい。

たぶんこの人のイメージに引っ張られている

◆運転する時だけ眼鏡を掛けたりするのもカッコいい

◆サイドブレーキを引く仕草もカッコいい

◆走行中にバックミラーを見る仕草もカッコいい

◆アクセルやブレーキを踏んでいる足もカッコいい


しまいにはお店で駐車券をもらうのもカッコいいとか言い出しそうな勢いだが、普段見ることのない動作をしているおじさまは何でも新鮮で素敵に見えるものなのだ。
ま、あんまり見る機会のない人生だけど。


っていうか。
私の好きになるタイプのおじさまというのは、もはや運転自体しなくなろうかという世代なのだ。
なんなら免許も返納しようかという。
運転しているおじさまを見る楽しみは早晩、皆無になる運命だなと思う。


でもそれで全然かまわない。
だって、おじさまを好きになるというのはそういうことなのだ。


















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