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負けず嫌いでやったことが、あんなに喜ばれるとは。

その日の朝は出勤して、いつものように上司に朝の挨拶をしたところ、いつもなら
「おはよう。」
と挨拶を返してくれる上司が何も言わずに、大きな目をいつも以上に見開きながら私をじっと見つめるのです。

私は上司の顔を見て、前回の出勤時に何か失敗をしたのではないか、と思い、何を言われるのかと身構えていると、
「パソコンで外字作ってくれたのはすぎやまさん?本当に助かったよ。その場にいたら抱きしめたいほど嬉しかったよ。」
と言うのです。

上司は男性なので、抱きしめたらまずいですよー、と心の中で呟きながら、
「お役に立てたなら、良かったです。」
とホッとした気持ちで答えました。

私はパソコン作業は好きなのですが、Excelやwordにある細かな機能は使いこなせません。ましてや、今の仕事に携わるまでは外字を作ったことすらなかったのです。

今の職場に入った当初は、初めて聞く言葉や初めて見る書類、初めて扱う事務用品など私にとっては初めてづくし。前任者は退職されるまでの1週間で、業務内容についてできる限り教えてくださいましたが、その間、私の耳に残る前任者のある言葉がありました。

「これもやったことないんだねー。
 この意味も分からないんだねー。」

その言葉を聞くたびに、ひとつずつしっかりと覚えていこう、と自分を鼓舞していました。しかし前任者がパソコンで外字を作る作業を隣で見ていたときにこの言葉を耳にして、私にはスイッチが入りました。

「自分で調べて作れるようになるから!」
と心の中で呟いたのです。

その日の夜、家でパソコンを開き、ネットで外字の作り方を検索し、実際に作ってみたのです。時間はかかりましたが、作り方も分かり、これなら職場でも大丈夫と、満足げな気持ちでした。

あれから日が経ち、実際に職場で外字を作る機会がなかったのですが、先日とうとうその日がやってきました。私はパソコンに向かいワクワクしながら外字を作り、しばらく前に家で練習したことをやっと活かすことができ、とても嬉しい気持ちになりました。

外字1文字作成しただけなのに、達成感と満足感を味わっていました。

自己満足ではありましたが、私は案外負けず嫌いなのだと改めて自覚しました。

そのような経緯で外字を作成しましたが、上司にとっては、後から作ろうと思っていた外字がすでに出来上がっていて、他の業務に時間を充てることができたのがとても嬉しかったようです。私の自己満足と負けず嫌いからやったことにもかかわらず、それが他の人のお役に立てたような気がして、私にとっても嬉しい出来事となりました。


上司に、外字にまつわる話をしたら
「すぎやまさんに根に持たれないように、言葉には気をつけなきゃいけないね。」
とおっしゃったので、
「私、わりと根に持ちますよー。」
とお伝えしておきました。




ヘッダーはのイラストからお借りしました。背景が4色あるうち、この色が気に入り使わせていただきました。ありがとうございます☆彡

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