第２１話：悲しいココロ／感じないカラダ

『やさしい』と『甘やかす』は、違う。
引き止めてあげたら、甘やかす？
いや、俺の過去を償うのなら、引き止めることがやさしさなのか？
彼女のためには、これで良かった。
でも、俺はその業界の闇を知っている。
だから、これもまた罪になるのか？

思考が交差し、なかなか寝付けない。

ストレッチでもするか、、、

と、そのとき。
彼女から電話がかかってきた。

やあ、ハニー。
キュウリにハチミツはメロンだったかい？

「、、、」

彼女は泣いていた。

いつもの素敵ツッコミが無いっちゅーコトは、なかなか追い込まれた状態ってとこか？

「、、うん」

担当者との営みは気持ち良かったですかお姫様？

「なんで、ヤッたって分かるの？」

流行語、、いやここで冗談はやめとこう。
それは、俺の過去を知るおまえさんが一番分かってるハズだろ？

「知ってて、なんで止めてくれなかったの？」

おまえが、自分で決めて行動したことだから。

「、、気持ち良くなかった」

だろうな。
カラダは喜んだか？

「苦痛でしかなかった」

ギャラと仕事内容は見合うかな？

「マイナスでしかない」

じゃあ、その悲しいココロと感じないカラダは、二度と繰り返さないようにしなさい。

「はい」

担当者にその場での撮影はされた？

「されなかった」

じゃあ、翌日にでも他のやつ＝男優と撮影する契約を結んだってとこかな。

「うん、断れなかった」

撮影が終わったら、すぐ俺に連絡しな。

「もちろん、そうする」

翌日、金曜の夕方。
目黒での仕事と自身のトレーニングを終え、次の職場へ向かう途中、、

彼女から電話がかかってくる。