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本屋さんに行くということ

 自転車に乗って遊びに行くようになり、行動範囲が広がった小学校高学年辺りから、学校から帰ってきた夕方や長期休暇に、お小遣いを握りしめて一人で本屋さんに行くようになった。

 両親に連れて行ってもらうと、時間の都合もあってゆっくり見られないので、自分のペースで浸りたくて自然とそうするようになった。

 あの頃は、田舎でありながらも自分で行ける本屋さんが3〜4軒ほどあって、気分によってお店を選んでいた。

 小さい本屋さんだけど、店番のおじさんがいて、小学生の自分がゆっくり立ち読みしていてもそっとしておいてくれて。
 学校から帰った後自転車を走らせ、夕日が差し込む店内で、一通り棚を辿ってピンときた本を手にして、ワクワクしながらページをめくる。
そんな空間と時間が大好きだった。

 同居の祖母は足が悪くて、自転車や歩いて出掛けることが少なかったから、祖母に買い物を頼まれることが多かった。
両親に内緒でお駄賃を貰うこともあり、買い物に行きながら本屋さんに寄って好きな本を一冊買う、ということが出来た。最終的には家に本が増えることで両親にバレてしまうのだが。

 児童書、占いの本、雑誌、小説…と、読む範囲が広がった。

 働く両親は本を読む人たちではなかったので、車でしか行けない図書館へ連れて行ってくれる機会はほぼなかったのだけど、立派な昔話のセットを買ってくれたことで祖母にたくさん読み聞かせをしてもらい、本が好きになって、お駄賃を貰うことで本屋へ通って好きだと思う本を買うようになった。その環境を与えて貰えたことにとても感謝している。

 車の運転が出来るようになった少し前に、近くにTSUTAYAが出来た。それまでで1番大きな本屋さん。ここは今でも通っているから、20年以上のお付き合いだ。
 欲しい本がなくても仕事帰りにまっすぐ行って、棚を辿って新しいジャンルを発掘したり。働いたお金を好きなように使って本を買えることが幸せだった。

 どんなファッションで統一したら良い? …と悩めばファッション雑誌を探しに。
 自分の性格に悩むことがあれば、自己啓発本を。背表紙を辿って、「コレだ」という本に出会えると元気が出る。
 パソコンの使い方に不安な時は、取扱説明書的な分厚い本を求めて。
 母が入院した時は、気持ちが元気になれば…と、大好きな花の写真がたくさん載っている本や雑誌を選んで病室に届けたことも。

 こんなふうに、何か悩むときは答えを求めてまず本屋さんへ行く。誰かに自分の気持ちを打ち明けるのが苦手だったのだけど、本屋さんに行くと必ず答えが見つかる。本を買っただけで、読まなくてもなんだか解決した気持ちになることもある。
 ありのままの自分をただ静かに受け止めて、その答えを教えてくれる存在だった。

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