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優先席

前回、「電車の中で本を読む」というの投稿をしたが、その日の帰りのことがずっと胸の中で引っかかっていて時折思い出す。

前回の投稿はこちら↓


普段は車生活で、電車やバスを使うのは時々。
満員電車も苦手、吊り革や手すりなど、掴まるところのない場所で立っていることも苦手だ(体幹がない)。

しかし、優先席が空いていても「座る」という選択肢はなかった。

先日の帰りはラッシュの時間帯。一本前の電車はぎゅうぎゅうで乗り込めなかったので、次に入ってきた電車に先頭で乗り込んだ。

自然と、左側の優先席の前に流されて立つ。
後からもどんどん入ってきて、ぎゅうぎゅうの状態。
空間が無いのも辛い。

ざっと周りを見渡し、娘と一緒に、「一旦優先席に座ろう」と、目の前の3人掛けに奥から2人で座り、空いていた乗降口側の一席に外国の方が座ったところで走り出した。

電車に乗り込む前、両足が軽く攣ってしまった。

この日は普段より歩いたし、急に暑くなってきて、たくさん汗をかいたので軽い脱水症状かもしれない、と、早めの夕食を軽く取りつつ、しっかり水分を摂って休憩してから乗り込んだので、一駅でも座れるようなら座りたい、と思っていた。

それでも優先席に座るというのはなんだか居心地が悪い。
ぎゅうぎゅうの車内、人との距離も近いので、なんとなく、目線を下向きに過ごす。

そんな状況なので、あまり周りをキョロキョロと見ていなかったのだが、多分、その後停車した駅から、前には抱っこ紐で小さな子、片手には2〜3歳の小さな男の子の手を引いて、もう片手には折り畳んだベビーカー…という、前も両手も塞がっている女性が乗車した(もしかしたら私と同じタイミングで乗車していたのか…目に入っていなかっただけなのか、記憶が曖昧。)。

隣に座っていた外国の方が降りたタイミングで、乗降口付近から、空いた席にさっと小さな男の子を座らせ、思わず可愛いなぁ…と眺めてしまったが、ハッとして慌てて我に返り、「この席を使ってください」と伝えると、「私は大丈夫なので、こちらの方に…」と、すぐ隣にいらっしゃった年配の女性に座るよう勧めていた。

お互いに譲り合う感じなので、「(娘の座っていた分と)二席ありますのでどうぞ」と改めて伝えると、「ベビーカーがあるから、(これを持ってその席まで行けそうにないので)私は大丈夫です」と。

自分が立つ代わりに持ってあげたかったが、密集していてそれも出来そうにない。

すると、女性の近くに立っていた大学生らしき若いお兄さんが、「僕、○○駅で降りるので、そこまででしたらベビーカーを預かるので座ってください」と。

お兄さんに感謝を伝え、隙間もないような状況、どうにか無事3人とも座れた。
隣りに座る男の子に、「あなたもお兄さんみたいに優しい人になるんだよー」と言い聞かせていた。

両手が塞がる状況の中、自分よりも近くの方を思いやる女性の気持ち、さっと手を差し伸べられる男性の気持ち…優しい温かい空気が流れた。


その様子を見て、自分も初めて一人で生後2ヶ月くらいの小さな娘を抱いて、ドキドキしながら本屋さんへ行った日を思い出した。
車のチャイルドシートに乗せて、二人きりで近所に出掛けてみた日。

本屋さんの手動のドア。
押そうとドアに手を掛けようとしたら、お店の内側から大きく開けて「どうぞ」と声を掛けて下さった、十代後半であろう若い男性。

お礼を伝え、その優しさに泣きそうになった。
久しぶりに外へ出て、家族以外の人との関わり。
そんな状況だったから、余計胸に響いた。
そして、抱っこしている娘に、
「優しい人になってね」と声を掛けたのだった。

*  ・  *  ・  *  ・  *

次の乗り換えでも、混雑している車内。またしても優先席前へ。
娘と一つの吊り革に二人で捕まって、二駅ほど乗ったあたりで車内が一気に空いてきて、近くの優先席が一席、通路挟んで反対側の優先席も一席空いた為、娘と私、それぞれで離れて座った。

周りを見渡し、立っている人がいなかったので座ったのだが、そのうちスマホを開いてLINEを確認し、そのまま画面に集中してしまい、しばらくしてハッとして顔を上げると、立っている方も数名いらっしゃって、目の前には赤いヘルプマークをバッグに付けている女性が。
いつから立っていたのかすらわからない。

とにかく「気が付かなくてごめんなさい。こちらの席使ってください。」と立ち上がって声を掛けた。

すると「次の駅で降りるから大丈夫です。」と。
「本当にごめんなさい。」と伝え、顔を上げられなかった…。

降りる後ろ姿を目で追うと、足の具合が悪いようだった。
もう一度、心の中で「ごめんなさい」を伝えた。

*  ・  *  ・  *  ・ *

時々しか乗らない電車だけれど、電車のマナーや優先席のこと、今回の経験で考えたり調べたりしてみた。

ネットで検索してみると、
2018年に話題になった、バスの優先席についての記事を見つけた。

こちらの記事に書かれている声も参考になった。

そして。
目に見えて、優先席の対象となる方、ヘルプマークやマタニティキーホルダーを持たれている方の他にも、見た限りわからなくても、その時具合が悪くて辛い方だったり、座りたい状況の方がいるのかもしれない。心に留めておきたい。

それは今回、足を攣った後に優先席に座ったときに感じたこと。

私をパッと見たら、そんな状況は周りの人はわからない。アピールする印が欲しい、って思ってしまった。


また、臨機応変に座っても、混雑していて隙間もない状況だと、譲ることも難しかった。声を掛けること自体も難しい時があると思う。

譲って立ち上がった時に、元々立っていた方々のところへ無理矢理入り込む形となる。

あちらをたてればこちらがたたぬ…の状況にもなったりする。

優先席に限らず。
一人一人の目配り気配りで気持ちよく。

座っていても、本を楽しんでいても、時々周りを見渡したい。

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