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花丸恵の食べたり呑んだり作ったり

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自分が書いた食べ物やお酒などに関するエッセイをまとめました。 食べた感想だけでなく、食べ物に関して疑問や思ったことなども書いています。 今後もどんどん追加していきます。 食いしん…
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2021年1月の記事一覧

スケルトンスパゲッティ

 どうしてこうなった……。  土曜日の昼下がり。  目の前で湯気が立っているスパゲッティを見ながら、小学1年生の私は固唾をのんだ。  数日前のことである。  私は母から、今度の土曜日のお昼ごはんは、ミートソーススパゲッティだと伝えられた。  ミートソーススパゲッティ。  赤いドロッとしたカレーみたいなタレがかかっていて、それを絡めながら食べるやつだ。私の知らないうちに、母は洋食屋へ修行にでも行っていたのだろうか。私の心は躍った。  今では、ミートソーススパゲッティは

知らぬ間に崎陽軒

 その日、私は、12歳の少女に救われた話というタイトルの記事を書いていた。なかなか苦戦したものの何とか形になり、もう一度見直したら投稿しようと、文章を推敲していた。  その時、書き綴っていたのは、自己否定、感情の手放し、イジメに関することなど、至って真面目なものだ。最初から順を追って、気になる表現はないか、無駄な表現はないか、記事を見直す。  基本、私の推敲は、無駄を削ることに神経を注いでいる。気持ちがほとばしると、余計な表現、文章を書き込んでしまうからだ。  推敲中、あ

サイコパスな餅

ある日、餅を食べる私に向かって、母がこう言った。 「慌てずにゆっくり食べなさいよ。お餅で死ぬ人だっているんだから」 青天の霹靂とはまさにこのことで、 当時、10歳に満たない子供であった私は、餅で人が死ぬという事実に 驚きを通り越して恐怖を感じた。母に理由を聞くと、 「喉につまらせて息できなくなって死んじゃうのよ。 口開けて、掃除機で餅を吸い取って助かった人もいるらしいけどね。 苦しいわよ、絶対。だから、よく噛んで飲み込まないと危ないのよ」 一度は母の冗談かと疑ってみた

おにぎり文明開化

おにぎりで好きな具はなにか。 といった類の話をするのが大好きだ。 おにぎりは、かつては家庭の味であったが、 近年では、コンビニで気軽に買える食べ物となった。 商品として店に並ぶようになると、どれを買うか決める必要がある。 そうなると、おのずと、自分はどの具が好きか、 ということを、考えるわけだ。 鮭か、明太子か、昆布か、考えるだけで楽しい。 今では当たり前となった具も、かつては異端だった。 私にとって、おにぎり文明開化が起こったのは、中学生の頃のこと。 その頃、私の姉は

三日とろろに偲ぶ

1月3日の朝、我が家では三日とろろを作る。 三日とろろは、お正月の3日目に、 長寿や健康を祈願して、とろろ汁を食べる風習のことだ。 まだまだお正月気分が抜けないのだが、 三日とろろを作る時だけは、私は厳粛な、 しんしんとした気持ちになってしまう。 2日の夜、夫に、 「明日の朝は、三日とろろだよ」 と伝えると、一瞬、寂しそうに顔を歪めた。 夫はとろろが好物だ。でもどうしても少し、悲しいのだ。 私は、静かに頷き、その表情に応える。 私達夫婦は、この時、同じ人物を思い浮かべてい

おせちバンザイ【2021年のおせち】

お正月ですね。日本酒がうまい。うまい。 皆さん、新年、どんな物を召し上がっていますか? 私は、人が何を食べているか、物凄く気になる質なのだ。 だからクレコ905さんの記事で、おせちのお重を見て、 すごく嬉しくなってしまった。 よそのお宅のお手製おせちを見られるのは貴重だ。 この美味しそうなお重の引力に引き寄せられた私は、 今年のおせちの記録を残しておこう、と思い立った。 勢いがあるうちに、早速書いていこう! 手製のものは、 筑前煮、たたきごぼう、里芋煮の素揚げ、手綱