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おもちょろい夫

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面白いことを、ちょろっと漏らしがちな夫が登場するエッセイです。面白いだけではなく、たまに哲学的なことも言ったりします。
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2023年5月の記事一覧

ビートルズが来た。

 五月も後半に入ると、いよいよ夏本番の気配が漂ってくる。  今の季節は、いうなれば初夏。一応、もう夏なのだから、30℃越えの夏日が続出するのも当然と言える。  だが、私は暑いのが苦手だ。  暑さというよりも湿気が苦手で、汗っかきのせいか、部屋の湿度が60%を越えてくると、もう駄目である。 「何か今日、暑くない?」 「蒸れる! 体が蒸れるよぉ!」 「痒い! お腹が痒い!」  そうやって、一人で大騒ぎしている。  近所迷惑になるほど騒いでいるつもりはないが、そばにいる夫からす

トドに抱いた親近感

 実家にいた頃、だらしなく寝転んでいると母に言われた。 「トドみたいに寝転がってるんじゃないの!」  家で細々した家事をして働いていた母からすれば、手伝いもせずゴロゴロ転がる娘が、邪魔で仕方がなかったのだろう。  これがスリムで小柄な人であれば、犬や猫など、小さくて可愛らしい動物に例えてもらえるのかもしれないが、いかんせんそういった愛らしさが私には皆無だった。  しかし私は、母からトド呼ばわりされても、大して気にも留めずにいた。なんせ、トドと言われたところで、見たこと

迷子の鳥を探しています。

 その日、私達夫婦は、頭の上でタオルを回していた。  一見すると、その姿は矢沢永吉や湘南乃風のライブに熱狂するファンのようにも見えるが、ここはライブ会場ではなく、自宅の賃貸マンションの一室である。  そんな賃貸マンションのポストには、郵便物だけではなく、いろいろなチラシが投函される。我が家で一番多いのは、宅配ピザやお寿司、新築マンションなどのチラシだ。ある日、そんなカラフルなチラシの中に、自宅のプリンターで印刷したものと思われる、素朴なチラシがまぎれていた。  迷子の鳥を