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我が家では、葛根湯を常備している。 急に季節が変わったせいか、妙な調子の悪さがあるのだが、そんな微妙な体調の悪さに対応してくれるのが葛根湯だ。 しかし、この葛根湯、飲む決断をするタイミングが非常に難しい。 熱や咳、鼻水などの症状が出てから飲むのでは遅いのだ。私は比較的気軽に葛根湯を飲んでいるが、やはり薬は薬なので、サプリメント感覚で飲むわけにもいかない。どこかのタイミングで、「今日は葛根湯だな」という決断を下さなければならないのだ。 今日も体調がイマイチで、葛根
夫が悪夢を見ているらしく、うなされていた。 うーうーと呻き声を上げている。こういうとき迷うのは、起こした方がいいのか、このままでいいのか、ということである。 例えうなされていたとしても、一応寝ているのだから、起こすのは悪い気がする。いったん目を覚ましてしまうと、再度寝られなくなる可能性もある。でも今回は、1分おきくらいに3度呻き声をあげていたので、起こしてみることにした。 「どうしたの?」 声をかけると、夫がピクッ!として目を開けた。眠りから覚め切らない、ぼんや
夫に初めて会ったときのことを、今でも鮮明に憶えている。 後ろ姿で立っていて、顔が見えないにもかかわらず、何か見えざるものから「この人ですよ」と言われているような感覚があった。大袈裟だと笑われるかもしれないが、一瞬のうちに縁のようなものを人に感じたのは、後にも先にも、このときだけだ。 その縁は実を結び、一緒になって22年になる。 ずっと夫婦二人で暮らしてきた。子供はいない。そのせいで自責の念に苦しんだこともあったが、夫はそんな私を、何も言わずに見守ってくれた。 私
虫が鳴いている。 毎年コオロギや鈴虫の鳴き声を聞いては来たが、今年の鳴きっぷりは凄い。しかもかなりの至近距離で鳴いている。その姿を確認したわけではないが、どうやら寝室の窓の真裏にいるらしい。そこは草木も生えない殺風景なベランダで、虫にとって居心地がいいとは思えないような場所である。 午前0時を回ると、コオロギの音色は澄み切って、その美しさを増してくる。その声に耳を傾けながら夫婦で晩酌をしていた。 「今日もいい声で鳴くねぇ」 私がそう言うと夫が、 「雑草も生えてないの
スマホに変えて早三ヶ月が経過した。 遅すぎたスマホデビューであったが、今ではフリック入力もそれなりにできるようになってきた。スマホにするのを嫌がっていた半年前の自分に教えてあげたいものである。 しかし、今、困ったことが起きている。 スマホにしてから、夫が連絡をあまりよこさなくなったのだ。と、いうよりスマホを家に置いて出掛けてしまう。 出掛けた夫に、ああそうだ、とメールをしても、うちの中で「ブインブイン」とバイブ音がするのである。夫に送ったメールの着信を、いの一番に