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花丸恵の掌編小説集

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自作の掌編小説(ショートショート)を集めました。
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#ピリカグランプリ

起きてほしくない人 ~ショートショート~

 点検作業を終え、仕事終わりに休憩室に行くと、坂本が弁当を食べていた。 「おう、お疲れさん。今日はなに?」 「生姜焼きです」 「おぉ、いいなぁ、もらって帰ろう」  今起きて働いている人達の楽しみは食べることと、こうして仕事仲間と話をすることくらいかもしれない。  半年前に猛威を奮った伝染病は世界中で多くの死者を出した。  今現在、ワクチンが開発されるまでの間、世界中の人を睡眠ガスで眠らせるという対策が取られている。それでも最小限のライフラインを維持する必要があるので、私の

睡眠売買 ~ショートショート~

とある部屋の前に立つと、 男は意を決したようにドアノブに手をかけた。 ガチャという音がして、重たいドアがを開く。 「予約した者ですが」 男は部屋の中にいた老人に話しかけた。 すると老人は、部屋の中心にあるリクライニングチェアに 男を座らせると、 「1日何時間、売って頂けますか?」 少々しゃがれた声で聞いてきた。 男は食い気味に言う。 「何時間でも、可能な限りお願いします!」 男は焦っていた。 何としても、今年こそは司法試験に合格したい。 今年ダメだったら諦めるつも