フルーツさんのお洗濯 #短編小説
舞うイチゴを見た。
風に飛ばされ、舞い上がっていたそれに手を伸ばし、パッと掴むと、
「すみませーん!」
上空から声が聞こえてきた。
「こっちです! こっち!」
声のする方に、顔を向けると、青い空を背にした二階建ての木造アパートが見えた。その二階のベランダに、乗り出すように大きく手を振る、女の人がいる。
「今、取りに行きます! 待ってて下さい!」
そう言うと、女の人は素早く部屋に戻り、窓を閉めた。私は手に持っているものを広げてみる。それは、黒地に大ぶりのイチゴが全面