遠き日の記憶

受験シーズンだ。今年からセンター試験じゃなくなったみたいだけど。

私がセンター試験を受けた時、雪が降っていた。引率の担任がスーツに長靴という出立ちだったので覚えている。

私を除くクラスメートたちの体調は最悪の状態だった。

家も学校も田舎だったので、センター試験のときには、受験するクラスメートとともに前日入りして旅館に泊まったのだが、この旅館が大はずれだった。

風呂がものすごくぬるかったのだ。外は雪が降るほど冷え込んだ日だった。

私以外の全員が決められた時間を守り、体が冷えたまま風呂から上がって、風邪をひいてしまった。

次々に発熱し、引率の先生たちが氷枕と薬を持ってバタバタと夜中走り回っていた。

私は、自分で言うのもなんだが、真面目な生徒だった。ルールは基本守る。ルールを破るというエネルギーを使うのが面倒くさいという怠惰さゆえでもあるが、長いものには巻かれとけ的な、とりあえず言われたことには従う生徒であった。

でも、ぬるい風呂だけは受け入れられなかった。その日「ぬるい風呂になんて入ってられるかバカヤロー」という反骨精神に目覚めた私は、蛇口からお湯を出しっぱなしにして首までお湯に浸かり、大浴場にひとり居座り続けた。

出てくるお湯もぬるかったが、私は決められた時間を無視して、首までお湯に浸かり体が温まるのを待った。

みんなが最悪のコンディションでセンター試験を終えてフラフラしているのに、自分の娘だけがピンピンしているので迎えにきた両親は驚いていた。

丈夫な体と熱い風呂好きのおかげであった。

街中の制服姿の学生を見たせいだと思う。 大昔のそんなことを懐かしく思い出した。

丈夫で風呂好きなのは変わらないが、かつての高校生だった私は、当時の親の歳も超えた立派な中年である。

丈夫なんて当たり前のことのように思っていたけど、それがどんなにありがたいことか、この頃実感する。

体が丈夫なおかげで乗り切れたことも結構あるから、親には感謝している。

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