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童話小説「ガルフの金魚日記39」

春さんのご両親は、冬さんとの結婚を許してくません。
いちじく島のような遠く離れた小さな島に、かわいい娘をやりたくない、というのです。

春さんのご両親は、大きな街の、立派なマンションという所に住んでいるそうです。
いちじく島に来るためには、電車を乗り継ぎ、それから連絡船に乗って、やっとたどり着くのです。
その連絡船も一日に一便しかありません。この国の、なれの果てに行ってしまうと感じたのでしょう。

ぷくは、いちじく島はのんびりとした、とてもいいところだと思っています。
おっきな街にはない、まったりとした空気があります。時間はゆったりと流れています。そして、ひとはみんな心からやさしいです。春さんは、このような島で育った冬さんだから、愛したのだと思います。
こんど、春さんにきいてみたいと思います。ぷく。

ぷくぷく考え込んでいると、水平線がむらさき色に白んできました。
もう少ししたら赤く空を染め、黄色くピカピカかがやく太陽が昇ってきます。
金魚鉢のふちで休んでいた四季ばあさんは、すでにいません。
青白く光る海へ、それともあの世にもどっていたのでしょうか。

四季ばあさん、また遊びにきてください。
ぷくはいつでも待っています。
胸ひれを合わせ、ぶくぶくとお祈りをしました。

 ランドセルを背負った秋ちゃんがきました。学校に行くようです。
「おはよう、秋ちゃん」ぷくぷく。
「ガルフ、おはよう。行ってきまーす」
 元気よく、秋ちゃんはかけていきました。
 ケンちゃんと待ち合わせをしているのでしょうか。にこにこしています。

 きのう、四季ばあさんから聞いた春さんのこと、秋ちゃんが帰ってきたら話してあげようか、どうしようか、迷います。ぷく。
 でも、春さんが冬さんのところにやってきた、ただそれだけですからね。これだけでは、ふたりがどうして結婚したのかわかりません。

 そもそも、冬さんは春さんとどこで知り合ったのでしょうか。
 ぷくも、気になりはじめました。
 ぷくぷくぷく…。

     明日の金魚日記へつづく

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