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ガルフの金魚日記4

 ぷくを買ってきたのは、この家のお父さんの冬さんです。冬さんの話だと、ぼくはキャリコ琉(りゅう)金(きん)という種類に入るそうです。しっぽが大きく、優雅にゆらゆらゆらして泳ぐ金魚です。
みなさんもどこかで、ぼくの仲間を見たことがあると思います。

ぷくは、アサガオ形の金魚鉢の中で飼われています。それも、ぷくひとりだけです。いや、ぷくいっ金だけです。

そのためなのかわかりませんが、個金的なことで申し訳ないのですが、最近になり、急に気になりだしたことがあるのです。それは、ぷくはどこで生まれたのか、ということです。

ぼくのお父さんやお母さんは、元気にしているのでしょうか。そして、兄妹たちはどこで、どうしているのでしょう。
とても気になるのです。

そんなことで、気持ちが乱れるようになりました。みなさんにとっては、どうでもいいことかもしれませんけど、でも…、どうしようもなく、気になるのです。ぷくぷくぷく…。

のんびりと泳いでいる金魚だから、悩みなんてないだろうというのは、あなたがたの勝手な思い込みです。
どんな生きものにだって、生きている限り、悩みはあるのです。

多くの生きもの悩みは、食べることと、恋する相手のことです。
人間のみなさんだってちょっと前まで同じだったはずです。

ほんの何百年か前までは、王様や貴族、それと裕福な商人しか、おなかいっぱい、食べられなかった。それ以外の多くのあなたたちは、食うや食わずの貧しい生活をしていたそうですから。

もっと、もっと、むかしだったら、きっと、ぼくたちと同じように、お腹をすかせ、食べ物を探していたのではないでしょうか。

動物や他の生きものたちは、いまでも食べることに苦労しています。その苦労はさらに深まっているようです。

なぜかというと、人間たちが急速に増え、地球のありとあらゆるところに進出し、人間以外の生きものたちは、食べる場所も、食べるものも急速に減ってしまったそうです。
だから、本当に心配なのです。

金魚鉢にいて、どうしてそんなこと知っているんだって。
それは、おばあさんのテレビがそういっていたからです。

ところで、人が自由に恋愛でき、結婚できるようになったのも、ちょっと前からだとおばあさんからききました。それまではだれかに紹介され、その人と結婚していたそうです。

おばあちゃんのお母さんは、相手の顔を見たのは、結婚式の当日だったそうです。いくらなんでも、ぼくたち生きものは、絶対、そういうことはありません。

ほとんどの生きものは、オス同士が決闘して、恋する彼女を手に入れるのです。彼女のほうも、そんな強いオスだから、愛してくれるのです。

そういう意味では自然界にいる生きものたちは、生命が生まれてから、ズーっと自由恋愛だったのです。いいえ、自由恋愛という言葉すらありません。

ましてや、誰かに紹介され、結婚するなんて、絶対にありませんし、政略結婚や策略結婚というものありません。

あるのは、純愛だけです。ぷくぷく。

そんなことを言っているぷくですが、恋愛をした経験はありません。当然です。この家に来てからぼくはずーっといっ金だからです。

ですからぷくには、このふたつの悩みがありません。食事は毎日ちゃんといただいているし、だれかに恋をすることもありません。というか、恋の意味が分かならいのです。
 このような悩みを持たないぷくは、恵まれているのでしょうか。

恋を知らないぷくは幸せ、それとも不幸せ? それが問題なんだけど…。

こんなぷくだから、ぼくのお父さんやお母さん、兄妹たちはみな幸せに暮らしているのか、気になるのです。気になりだしたら夜も寝ることができません…。
ぷくーぷくー…。(これ、ぷくのネイキです。)
                     明日の金魚日記へつづく

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