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執筆奮闘記 3 今日から実行できるお得情報

読者の求めているものは、明日から、
いや、「今日から実行できるお得情報」でしょう。

病気のメカニズムは分かったが有効な治療法はない、
という情報は読まれないのではないでしょうか。

ネガティブデータ(○○は効かない)でなく、
ポジティブデータ(○○が効く)を望んでいるのでしょう。

実用書は小説と異なり、過程より結論が命。
お金を出して本を買う読者の期待に応えるべく、
「今日から実行できるお得情報」を書かなければと意気込みます。

そんな私の前に立ちはだかったのが「エビデンスの壁」でした。

●エビデンスの壁

エビデンスとは科学的根拠のことです
「経験と勘が頼りの医療」からの脱却のために打ち出されたのが
「科学的根拠に基づいた医療」(EBM:evidence based medisin)です。

EBMの申し子である私は、教科書や論文にないことは、一言もしゃべらないし書かないという信念でした。
エビデンスもないのに、ペラペラしゃべるタレントドクターに、嫌悪感さえ感じていました。

しかし、エビデンスに縛られていては、ありふれたことしか書けません。

「専門家は断言しない」という特徴があります。

「ケーキを食べるとニキビになる」という情報発信も、それを実証した論文が存在しないため、「ケーキはニキビによくないように思います」と歯切れの悪い表現になってしまいます。

専門家であるがゆえに、無難なことしか発信できないというジレンマにおちいってしまったのです。

●C級もエビデンスのはしくれ

エビデンスは、ざっくりA級、B級、C級のレベルがあります。
A級のエビデンスとは、極めて多くの患者で実証された根拠を言います。
C級のエビデンスとは、「1例報告」「専門家の意見」などです。

つまり、一人の患者に当てはまる事実や、
私(専門家)の意見がC級のエビデンスに相当します。

二十数年、患者さんと向き合ってきた私は、
お粗末ながら皮膚の専門家と言えるのでは。
日々の診療で「こうだ」と気づいたことは、C級のエビデンスになる!
自惚れてはいけませんが、自信を持っていいのではと思うようになりました。

疲れている人にじんま疹が多いことを経験します。
それを反映してか、じんま疹のガイドラインに、
「疲れ」という曖昧な原因が加わりました。

現在はガイドラインに記載されていませんが、
「寝不足やお菓子でニキビやアトピーが悪化する」ことは自明の理です。

論文はなくとも、「寝不足でひどくなりますよ」「お菓子はひかえめに」と
「今日から実行できるお得情報」を発信していこう
と心が定まったのです。

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