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〔介護を学ぶ10〕食べさせてもらったから 食べさせてあげよう

食事や、衣服の着脱が自分でできなくなると、
お世話をしなければなりません。
今、この瞬間にも、奮闘しておられる方がたくさんあるでしょう。

◆古典に学ぶ 乳哺養育にゅうほよういくの恩

『仏説父母恩重経』に説かれている「親の大恩十種」の四番目、
乳哺養育にゅうほよういくの恩より学びたいと思います。

乳を飲ませ、養い育ててくださるご恩です。

「乳児は、母に抱かれて眠り、母の膝の上で遊び、母乳を食べ物とし、
 母の愛情を命として育っていく。」

「おなかがすいても、母が与えなければ、食べることができない。
 喉が渇いても、母が与えなければ飲むことができない。」

「寒くても、母が着せなければ、服を着ることができない。
 暑くても、母が脱がせなければ、服を脱ぐことはできない。」

「赤ん坊は泣くことを力とす」と言われます。
赤ちゃんの得意技は泣くことです。

おなかがすいて「おぎゃー」と泣いては、
食べ物や飲み物を与えてもらいます。

暑い時、寒い時も「おぎゃー」と泣いて、
服を着せてもらったり、脱がせてもらったりします。

◆母は全因縁ぜんいんねん

全因縁ぜんいんねん半因縁はんいんねんという言葉があります。

「半因縁」とは、お店の「主人」と「使用人」の関係をいいます。
一人前になった使用人が
「今日の私があるのは、旦那さまのお陰です」
と感謝したとしても、半分は使用人の努力によるものです。

「全因縁」とは、母と赤ん坊の関係をいいます。
赤ん坊は、はって冷蔵庫まで行き、戸を開けて食べ物を食べることはできません。
食事の準備も、食べさせてもらうのも、すべての因縁は母にかかっています。

◆わが身をかえりみず

「はじめ、花のように美しかった容姿も、数年の養育で衰えてしまう」

子育ては並大抵のことではありません。
赤ちゃんは昼夜の区別もなく、
2~3時間ごとにおなかをすかせ泣きだします。
産後、体調が十分に回復しないまま、眠れぬ夜が続きます。

母乳は母親の血液が原料です。
母乳を与えるのは、自らの血液を分け与えるいるのと同じでしょう。

その結果、美しい花がしぼむように、衰えてしまいます。

私たちが元気で大きくなれたのは、記憶になくとも、「乳哺養育の恩」によるのだよ、とお釈迦さまは説かれています。

◆介護は恩返し

親の介護は、「乳哺養育」の立場が逆転します。
受けてきたご恩ではありますが、親に食べさせるのは、
本当に大変なことです。

義母さんに何年間も、1食1時間かけて食事を与えておられる方がありますが、ただ頭が下がるばかりです。

受けたご恩は忘れがちです。
お釈迦さまの教えは、私たちには耳の痛いことですが、
『父母恩重経』には、介護の原点が書かれているのではないでしょうか。

参考文献
1)木村耕一:『親のこころ』,1万年堂出版,2003

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