うつ病と男性更年期障害は似ている
◆うつ病
日本では、働いている人の3%がうつ病またはうつ症状であり、
1%が休職しているというデータがあります。
うつ病の原因は、ざっくり言うと「心のストレス」と「体のストレス」でしょう。
ストレスが重なると、脳が耐えきれなくなって、破綻をきたしてしまいます。
うつ病の人は、脳の海馬という部分が小さくなったり、
脳のセロトニンというホルモンが減っていることが確認されています。
◆男性更年期障害
男性更年期障害は、ある芸能人が発表したことで有名になりましたが、
正式にはLOH症候群(late onset hypogonadism:加齢性腺機能低下症)と言います。
加齢に伴いテストステロンというホルモンが低下することによって発症します。
さまざまな症状が出ますが、大きく三つに分けられます。
①体の症状…関節や筋肉が痛い、など
②心の症状…イライラ、不安、憂うつ、など
③性機能の低下
このうち、②の心の症状が強い場合、うつ病と見分けがつきません。
LOH症候群の診断に使われている加齢男性症状調査票(AMS)を見てみましょう。
17の項目からなり、うつ病にありがちな症状もあります。
・睡眠の悩み(寝つきが悪い、ぐっすり眠れない、など)
・憂うつな気分(落ち込み、悲しみ、涙もろい、意欲がわかない、など)
・「人生の山は通り過ぎた」と感じる
・「力尽きた」「どん底にいる」と感じる
◆うつ病とLOH症候群
うつ病とLOH症候群は別々の病気ではなく、
オーバーラップしていると思われます。
テストステロンが低いとうつ病になりやすく、
中高年のうつ病患者はテストステロンが低いというデータもあります。
テストステロンが減る最も大きな原因は、加齢ではなくストレスと言われます。
LOH症候群の専門家である堀江重郎医師は、
発症の原因となる環境について、次を上げています。
・パワハラ上司から無茶の仕事を要求される
・自尊心を傷つけるような暴言を言われる
・仕事の目標設定が非常に高い
・目標に到達するために長期間の緊張を強いられる
・周囲が自分を評価してくれない
・自分のパフォーマンスに満足できない期間が長引いている
・定年退職し、仕事と目標を失う
これらは、うつ病の原因と似たり寄ったりでしょう。
テストステロンが下がっているうつ病患者にテストステロンを補充すると、半数以上は改善すると堀江医師は述べています。
男性でうつ症状のある人は、男性更年期障害の専門医を受診するとよいかもしれません。
参考文献
1)堀江重郎:『LOH症候群』,角川新書,2021
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