さわるとアレルギーを起こし、食べるとアレルギーを予防する
みなさんは、アレルギーを持っていますか?
・花粉による鼻炎
・サバを食べるとじんましんが出る
・ヤマイモを触るとかゆくなる
アレルギーにもいろいろありますが、
できることならば、避けたいですよね。
どのような仕組みでアレルギーになるのでしょうか。
◆アレルギーを起こすまで
花粉症を例にとってみましょう。
生まれつき花粉症の人はいません。
人生のどこかで、「花粉症になった時」があったのです。
40歳の2月に花粉症になった人があります。
それ以前から花粉は飛んでいて、花粉を吸いこんでいましたが、
体は花粉を「敵」と認識していませんでした。
40歳の2月に、花粉を「敵」とみなし、攻撃するようになったのです。
その攻撃が、くしゃみ、鼻水、鼻づまりなどのアレルギー反応です。
ある物質に対してアレルギーを起こすようになったことを「感作」といいます。
アレルギーを予防するには、感作しないようにするには、
どうすればよいのでしょうか。
「徹底的に避ける」
花粉症の場合、それも一つの方法でしょう。
しかし、食物アレルギーの場合、事情はひっくり返ります。
◆避けるとアレルギーになる
欧米では、以前は「乳幼児は乳製品や卵白、ピーナッツなどを与えるべきではない」と考えられていました。
しかし、その後の統計から、食べないようにしても、子供の食物アレルギーは減るどころか、むしろ増えていることが判明しました。
つまり、卵を避けていたら、卵アレルギーが増えたのです。
◆食べるとアレルギーが減る
この、統計結果をふまえ、2008年、イギリスのLack博士は「二重抗原曝露仮説」を打ち出しました。
「二重抗原曝露仮説」を端的に言うと、「さわると感作が成立し、食べると免疫寛容になる」ということです。
「さわると感作が成立する」とは、卵を触っていると、卵を敵とみなすようになるということです。
「食べると免疫寛容になる」とは。
「寛容」とは、辞書には「広い心で他を受け入れること」とあります。
卵を食べていると、卵を味方とみなすようになるということです。
「さわるとアレルギーを発症し、食べるとアレルギーを予防する」
今までのアレルギーの常識をくつがえす仮説です。
この仮説は、種々の実験で証明され、定説となりつつあります。
これより導き出される「食物アレルギーの予防法」は2つです。
①荒れた手で食べ物を触らないようにする
②過度な食事制限は必要なく、むしろ積極的に食べる
しかし、やみくもに食べればよいということではありません。
「適切な量とタイミングで食べると」と、ただし書きがありますので、
ご注意を。
参考文献
善本知広:「経皮感作食物アレルギーの分子メカニズム : 二重抗原曝露仮説の実験的エビデンス」,アレルギー 66(10): 1224-1229, 2017.